「立花さんから受け取ってた制服を見てピンと来た。それで、噂のことを思い出した」
女子の制服はこの辺じゃ有名だ。一目で気が付いた。
そしてあの頃学校中で噂が広がったのを思い出した。
"二年の先輩が自殺図ったって"
"マジかよ。それ誰、俺の知ってる人?"
「そもそもどこから広まった噂かわからなくて、正直知らない人だったから俺はあんまり興味も無いし本当かどうかもわからなかった」
だから、奈々美と話すようになってからもその噂の人物と奈々美は繋がらなかった。
"ほらあの可愛い先輩!いただろ!"
"は?あの先輩が!?嘘だろ!?"
"マジらしいよ?通報した人が、制服見てうちの学校名出したらしいし"
"しかもあの先輩、今入院してるらしいし"
"マジかよ……"
クラスメイトたちがそう話していたのを覚えている。
「マンションの屋上から飛び降りたけど、不幸中の幸いなのか木が上手いことクッションになってくれたから一命を取り留めたって聞いた」
薄い線が残ってしまっている奈々美の頰を指でなぞる。この傷もおそらく、木の枝で切ってしまったんだろう。