「おかえりなさい。今日はカーテンを洗ってくれる?その後に夕飯もお願いね」


「はい」



おばさんに言われたことをこなして、洗い物まで終わらせてからわたしは何も食べずに家に帰り、洗濯などの自分の家事をして予習と復習をしてから寝る。


空腹なんて感じなかった。ただ、疲れていた。




本当は部活もやりたかった。
けれどおばさんに怒鳴られるのがわかっていたからやめた。


放課後に友達と遊びに行ってみたかった。
けれど次の日おばさんの機嫌を損ねて仕事が増えると思うとそれはもっと嫌だったからやめた。


皮肉にも勉強ばかりしていたため成績は上がり、家事は得意になった。


そしておばさんからの要求は日に日に増えていく。


高校に入った時にはもう、自宅にいるよりも村元家で家事をしている時間の方が長くなっていた。


一種の虐待を受けているのではないか。自分でもなんとなくわかっていた。


でも、殴られるわけじゃない。


そもそも、親じゃない。


行政に相談する?でもそうなったら、責められるのは確実にわたしを置いて海外にいる両親だ。


それは嫌だった。両親のことは好きだ。迷惑をかけたくない。だからまだ黙っていた。



学校で話しかけてくれる友達にも、こんな生活をしているなんて知られたくないから必要以上に仲良くならないようにした。


遊びに行こうと誘われても、断るしかなかった。




部活もしたかった。

友達と遊びに行きたかった。

テスト前に皆で勉強会もしてみたかった。

バイトだってしてみたかった。

同じ家で、両親と普通の生活がしたかった。


当たり前のことを、したいことを全部我慢して、寂しさも苦しさも、何もかもを我慢して飲み込んで。人前では明るく笑って。悟られないようにして。


自分の感情を押し殺して生きてきたわたしは。







───ある日、もう何もかもがどうでも良くなった。