「今日はお風呂掃除をお願いね?それが終わったら、トイレもお願い」
「でも、わたし今日は宿題やらなきゃ……」
「なあに?泊めてあげるのに、おばさんの言うこと聞けない?」
「……ごめんなさい。お掃除やります」
「そう。それでいいのよ。終わったら教えてね」
無言の圧力が怖くて、従うしかなかった。
帰ってきたお母さんに伝えようにも、
「あんたがいなきゃ、ご両親ももっと仕事に集中できただろうにねぇ」
「あんたの存在が母親の仕事の邪魔になっているのに、ここに来るのがイヤだなんて言ったらもう仕事辞めるしかないかもしれないねぇ」
悪魔の囁きがわたしを恐怖で支配する。
おばさんに申し訳なさそうに何度も頭を下げて菓子折りを渡すお母さんを見て、もしおばさんの言う通りだったら。そう考えたら、もう何も言えなくなってしまっていた。
勇気を出して言っていれば何かが変わっていたかもしれないけれど、多分その頃にはすでにおばさんに洗脳されていたと思う。
中学生に上がると、もうわたしも何も言わなくなった。
その頃には両親は海外に行っていたため家に一人で。
さすがにもう泊めてもらうような歳ではなかったものの、
「今まで預かってあげてたんだから、恩返しくらいしなさいよ」
と言われてしまえば頷くしかなくて。
学校から帰るとまず家に荷物を置いて、二軒隣のインターホンを押す。