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わたしがお父さんとお母さんと、楽しく毎日を過ごすことができたのは、幼稚園まで。
小学生の頃、初めて二軒隣のおばさんの家に預けられた。
たった一日。お母さんはお仕事だから、仕方ない。
おばさんも優しそうだし、一緒に遊んでくれるって言うんだからいいじゃないか。
子どもながらにそう思ったわたしは、お絵かきや折り紙がしたいなあと漠然と思いつつおばさんの家に入った。
最初は良かった。可愛がってくれたし、いっぱい遊んでくれて楽しかった。
時には勉強も教えてくれて、家では出てこないような味の染みた煮物なんかもすごく美味しくて、あっという間に一日がすぎた。
それから、両親の出張のたびにわたしはおばさんの家に預けられるようになって。
それが何度か続いたある日。
「奈々美ちゃん、今日はね、お手伝いしてほしいことがあるの」
「おてつだい?」
「そう。いつもおばさん、奈々美ちゃんと遊んでるでしょ?」
「うん」
「だからね、今日はおばさんのお手伝いしてみない?」
それが、悪魔の囁きだったのだ。
食器を洗うお手伝い、洗濯物を畳むお手伝い、布団を干すお手伝い。
最初は楽しくやっていた。誰かの役に立つことが、純粋に嬉しかった。
────しかし、すぐにそれは"お手伝い"からわたしの"仕事"に変わった。