「奈々美、落ち着いて」
「りゅうのすけっくんっ……苦しいっ」
「あぁ。わかってる。だからまずは落ち着いて」
背中をさすってくれるものの、涙で視界はゆがみ自分が今どんな体勢なのかもよくわからなくなる。
意識も朦朧としてきて視界がぐるりと反転しそうになった時。
「───奈々美、ちょっとごめん」
「……んんっ……」
どうして謝るの。そう思うと同時に突然、何かに唇を塞がれた。
それは柔らかくて、温かくて。
グッと目を開くと、涙の膜のすぐ向こうで人の顔が見えた。
……龍之介くん……?
一度瞬きをすると、溜まっていた涙がこぼれ落ちて視界が開ける。
薄目を開けた龍之介くんと視線が絡まった。
これは、何?
キスされてる……?
それに気が付いた瞬間、恥ずかしがる間も無く龍之介くんは唇を離した。
「……まずは落ち着け」
なんてことないように告げた龍之介くんに、私は顔を真っ赤にしながら頷いた。