『───もしもし?奈々美?』


「龍之介くん……!」


『……奈々美、どうかしたか?』


「たすけてっ……助けて、龍之介くん」


『……落ち着け。今どこにいる?』



パニックに陥っている私のか細い声を聞いても、龍之介くんはとても冷静だった。


泣き言のようなことしか喋られなかった私の言葉を丁寧に拾ってくれて、龍之介くんは電話を繋いだまま走り出した。



『大丈夫だからな。すぐに行くから。そこで待ってろ』



何度もそう言っては私を安心させようとしてくれて、私もその言葉で少し落ち着くことができた気がした。



「───奈々美!」



電話の向こうと同時にすぐ近くで聞こえた声に、顔を上げた。



「奈々美!怪我は無いか?」


「龍之介くん……!」



息を切らした龍之介くんが、私を抱きしめる。


その大きな身体の温もりに安心したからか、急に止めどなく涙が流れ始めた。



「大丈夫。大丈夫だからな。奈々美、大丈夫だ」


「龍之介くんっ……私っ、私」



龍之介くんの服をぎゅっと力任せに握る。


それに怒ることもせず、私の涙が服を濡らすことも厭わずに、龍之介くんは私を優しく包み込んでくれた。


その時上手く息が吸えなくてヒューヒューと音が鳴る私を見かねて、少し身体を離してビニール袋を私の口元に当てようとする。


しかしパニックになっている私は顔を横に振るだけで、苦しさは増す一方だった。