息を止めていたらしく、反射的に肩で呼吸を繰り返していると目から涙がこぼれ落ちた。


頭の中を駆け巡る、様々な記憶の断片。


突然襲ってきた吐きそうなほどの頭痛に目を開けていることすらできなくて、さらには耳鳴りが不快な音を脳に響かせていた。



「っ……」



込み上げてくる感情の波が高く、今にも飲み込まれてしまいそう。


頭が痛くて、息を吸っても吸っても苦しくて、酸素が入ってこない感覚がして。


何度も何度も吸って、それでも変わらなくて。


痛みと苦しみと恐怖で感情がぐちゃぐちゃになった時。


このままじゃ、ダメだ。ここから逃げなければ。


言うことを聞かない太ももを何度も叩いて立ち上がり、ふらつきながらおばさんの家から飛び出す。


後ろから私を呼ぶ怒鳴り声が聞こえてきたけれど、それを無視して一目散に走り出した。



「たすけてっ……」



助けて、龍之介くん。


苦しさの中で願った言葉。


近所のコンビニの裏。人目につかない場所で壁に背中を預けてずるずるとしゃがみ込む。


震える手でスマートフォンを取り出して、何度も操作を間違えながらも電話をかけた。


それを耳に当てながら、流れてくる涙を雑に袖で拭った。