「やっと捕まえたわよ」
パーマでくるくるとした髪の毛をかきあげた瞬間、得体の知れない恐怖が私を襲う。
「あんたが勝手にあんなことするから、うちのやることが全部滞ってるのよ。ほら、わかったらさっさと立って行くわよ!」
「ど、どこに……」
「決まってるでしょ!?うちに帰るのよ!うーちーに!」
その帰る先が、私の自宅ではないという事だけはわかる。だからこそ、逃げ出したいのに。
身体が震えて、言うことを聞かない。
再び無理矢理引っ張られるように連れて行かれて、辿り着いた先はやはり私の家ではなく、二軒隣の家だった。
表札に書かれている名前は、村元。
おばさんの声が頭に響いて声が出せず、されるがままに玄関から中に入る。
……ここ、知ってる。
預けられていたのだから当たり前なのに、そんなことを思った。
リビングに入り、エプロンを投げられる。
「どうせ記憶が無いってのも全部演技なんでしょ!?白々しい。私から逃げようなんて思わないことね!」
どういうことだろう。おばさんから逃げる……?
私は、逃げようとしていたの?