「解離性健忘ってね、事故だけじゃなくて、心に大きな傷を持ってしまっていてそれが強いストレスになって起こってしまうこともあるの」


「はい。私も心因性じゃないかって言われてます。だから思い出した時、もしつらくて忘れたかった記憶なら私が耐えられないかもって、東海林先生も言ってました」



確かにきっかけは事故による怪我だったのだろう。


それによって私は記憶を失ってしまったけれど、少しずつ思い出していく中で、事故はただのきっかけに過ぎなくて。


もっと根本的なところで、私は何かトラウマを抱えているような気がする。


それがきっとあのおばさんに関係することで。


私はそれを思い出した時に、落ち着いて受け止められる気がしなかった。



「そう。人によっては何度もフラッシュバックしてしまうこともある。記憶が戻ったとしても、その後にPTSDっていう別の病気になってしまう人もいる。それは精神的に強いとか弱いとか、そんな問題じゃなくて。どんなに強い人だって傷付くことはある。だから、そのトラウマがどれだけその人の心を苦しめているのかだと思うの。……だから、あなたが今悩んでいることは、あまり意味が無いことなのよ」


「……そっか……」



私のトラウマ次第、ということか。