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「強くなる方法?」


「はい。教えてください」


「そうねぇ……」



カウンセリングの日。


私は前のめりになってカウンセリングの中原さんに強くなりたいと告げていた。


記憶を取り戻すため。取り戻した時に、それがつらい記憶だったとしても受け止められるくらいに強くなりたい。


中原さんはしばらく悩む素振りをした後に私の目を見て微笑んだ。



「無理して強くならなくても、いいんじゃない?」


「……え?」


「だって、あなたは一人じゃないでしょ?」


「どういう、意味……」



強くなりたい。その相談をしたかったのに。
強くならなくてもいい?……意味がわからない。


混乱している私に、中原さんはお茶を用意してくれて目の前に湯呑みが置かれた。



「そもそも、精神的に強くなるって、とっても難しいことだと思うの」


「……」


「これは私の持論だけど。肉体的な強さなら、トレーニングしたり鍛えればそれなりに強くなれる。でも精神面って、そう簡単じゃない。鍛えようが無い。そもそも強さなんて人それぞれで基準が違う。悩みの重さも違う。感じている苦しみも違う。奈々美ちゃんが抱えているトラウマがどれだけ大きいものなのかも、奈々美ちゃんが思い出してみないとわからないでしょう?」



難しい話に頷きつつも、湯気が立ち上る湯呑みを口元に傾ける。