「私、お父さんのことも夢で見たの。私を遊園地に連れて行ってくれるって言ってた夢……」
「そんなこともあったなあ。懐かしいよ。思えばあの頃が一番奈々美と一緒にいたかもしれないな」
「……うん」
「でも、これからはずっと一緒にいるから。遊園地もまた一緒に行こう。他にも奈々美が行きたいところにはどこでも連れて行ってあげるよ」
記憶は完全には戻っていないけれど、お父さんの顔を見ていると胸の奥からいろいろな感情が溢れてくる。
「……ううん。遊園地も行かなくていい。どこにも行かなくていいから、もう私を置いて遠くへ行かないで」
涙を堪える私に、両手を広げる。
「もちろんだ。今までのことは謝って許されるわけじゃない。だからこそ、これからはもうお前を一人にしないよ」
「……お父さん」
その胸に勢い良く飛び込むのはなんだか少し恥ずかしくて。
ゆっくりと近付いて、そして腕の中に閉じ込めてもらう。
力強くて、温かい。
「奈々美。生きててくれて、本当に良かった」
懐かしい香水の香りがして、また涙が滲んだ。