敷地から出たのを見て、呼吸を置いてからインターホンを押そうと手を伸ばす。
しかし一旦手を止めて、もう一度スマートフォンを出して電話をかけた。
一分間ほど、コール音が鳴り続けただろうか。
『……りゅ、のすけ……くん』
聞こえた声に、
「うん。俺。奈々美、今奈々美ん家の前にいるんだ。さっきの変なおばさんは逃げてったから、もう大丈夫」
『え……?うちに来てるの?』
「あぁ。奈々美に会いに来たんだ。ドア開けてくれるか?」
『ち、ちょっとまってて……!』
家の中から、階段を駆け降りてくるような音が聞こえて。
すぐにガチャリと鍵が開いた。
「龍之介くん……!」
開いたドアから飛び込むように抱きついてきた奈々美を驚きつつも受け止める。
「奈々美、怪我は無いか?大丈夫だったか?」
「うん、うん……。大丈夫」
大丈夫と口では言いつつも、全身が震えているのがよくわかる。その背中をトントンと数回叩き、
「一回入ってもいいか?」
となるべく優しい声をかけた。
「ご!めん……!ごめんねせっかく来てくれたのに。入って……」
慌てて俺から離れて招き入れてくれた奈々美に
「お邪魔します」
と声をかけて入る。
ドアを閉めて鍵をかけたのを確認して、靴を脱いで中に上がらせてもらった。