三年生になった。僕は図書委員にはならなかった。綾瀬さんになって欲しいと言われたがならなかった。なぜだろうか。不思議なとこに今の僕にはわからない。恐らく、当時の僕にもわからなかっただろう。物事には必ず理由があると言われるが人の行動にそれはあてはまらない。僕はなぜ図書委員を辞めたのかわからなかった。受験の年だったからかもしれない。図書委員になると言う勇気が出なかったかもしれない。理由はいくら探してもわからなかった。
しかし、もし今の僕があの時の僕に語りかけられるとするならば「図書委員になれ!」と言うだろう。あのときの僕が何を考えて図書委員にならなかったのかわからない。僕は図書委員にならなかったのを今でも後悔している。僕のクラスの図書委員は知らない女子がなった。
僕が図書委員にならなかったことを綾瀬さんに伝えると綾瀬さんは悲しそうな声で「そっか、なんで?」と言った。僕は「わからない」と答えた。「そっか」綾瀬さんはそのまま自分の仕事に戻った。僕は苦しかった。なぜ、あんなことをしてしまったんだ。 僕自身がしたことによって綾瀬さんを傷つけることになるなんて、そんなことを考えなかった自分に腹が立った。
それから僕が図書室に行く頻度は以前よりも下がった。図書室に行っても目的の本を借りたらすぐに出るということが多くなった。最初の方は綾瀬さんの方から話しかけてきてくれることもあったが、僕にはその優しさが怖かった。なぜ裏切った僕にそんな優しくしてくれてるのかわからなかったからだ。それから、僕と綾瀬さんの間には距離ができた。認めたくなかったけど、二年の頃に比べて明らかに仲が悪くなった。辛い。綾瀬さんもそうだったのかもしれない。
中二の二学期末、綾瀬さんは図書委員長を辞めた。僕が図書委員になっていればそのとき「おつかれ」と言えたかもしれない。しかし、無理だった。そのとき、綾瀬さんの隣には違うクラスの図書委員の男子がいた。その頃にはもう僕は綾瀬さんと喋ることはなかった。
三学期、受験シーズンに入り僕は勉強ずけの日々が続いた。第一志望の高校は元々は綾瀬さんと同じ高校だったが、そこは諦めた。単純に自分の学力じゃ足りなかったからだ。その問題をどうこうするにはもう時間が足りなかった。
受験も終わり、僕たちの卒業式の日がきた。
卒業式が終わり、みんなが各々写真を撮る時間が来た。僕も中学校生活を共にした友達達と写真を撮った。綾瀬さんとは写真を撮れなかった。声をかけようとも思ったが綾瀬さんは早くに帰ってしまったらしい。その日以来、僕は綾瀬さんを見ることはなかった。