この物語たちを、涙とともに

「この前ねこんな話があったんだ。笑えるだろ」
君に呼びかけてみる。
「そこで俺はこう言ったんだ……」
続きを言おうとした瞬間、背中に衝撃が走った。
座って話していたら、どうやら子供がぶつかってしまったらしい。
「大丈夫かい?」
「うん……ごめんなさい…」
「いいんだよ。これくらい痛くもなんともないさ」
……そろそろいい時間か。そう思い立ち上がり、タバコを咥え、火をつけようとする。すると、ぶつかってきた子が言った。
「…タバコは体に悪いってお母さんが言ってた……大丈夫?……」
子供ながらの純粋な心配だろう。
「……心配ありがとう」
子供の頭を撫でてやる。
子供は照れくさそうな顔をしながら向こうの方へ走って言ってしまった。
「……俺もそろそろ帰るよ」
あなたの墓をやさしく撫でる。
決して返事がないことがわかっていながら、毎日ここに来て話をしている。
……体に悪い、か。
本望だな。
俺も君のもとに早く行きたい……
タバコの二つ名は……


「緩やかな自殺」なのだから。


「殺したい」
私の「愛」は、よく狂ってると言われてた。
「好きな人を自分の手で殺すのが夢なの。あなたにだって、最初にそういったはずよ!」
愛した人の唯一の人になりたくて、人生の最高潮で勝ち逃げがしたくて。
「でも、あなたは『それでもいい』と言ってくれたじゃない!勿体なくて殺せなくなるくらい、幸せにしてくれるって言ったじゃない!!」
なのに……
なのに、なんで……
「……なんで、私なんかを庇ってこんなことになっているのよ…あなたを殺すのは私。あんな、トラックなんかじゃない。だから…」
「生きて」
「俺の誕生花の花言葉『悪意』なんやけど、なんで???こんなにピュアなのに」
「よう、お前の性格表れてんな」
「ほんまそれな」
「ヒドイわ〜お前ら」
公園のベンチで膝を叩いて笑い合う僕ら。
「お前のはなんやったんや?」
「ん〜、内緒」
「なんやねん、それ」
これは俺だけが知ってればいい。
もし、2人の話したら笑われるな。
そんなことを考えている時が、2人と話してる時間が自分の何より大切で楽しい時間だった。
3月30日の誕生花は「ローダンセ」
花言葉は『終わりのない友情』
これがお前らのことでありますように。
「あっ……おかえりなさい」
「……ただいま」
彼はそれだけ言って私の横を黙って通り過ぎていった。
2週間ぶりの彼の帰宅。
出ていく前は茶色だった髪色も金色になっていて、髪型もオールバックに変わっている。
最近はこうだ。見る度に髪色も髪型も服装も変わってる。
でも、私はどんな彼でも愛してる。
だから、大丈夫。
それから彼とご飯を食べてシャワーを浴びて同じベットに入った。
ご飯を食べてる時は会話なんてなかったが私は別にそれでも良かった。
彼が私のそばにいてくれるだけで……。
彼が帰ってきてから3日ほどした深夜。
私が寝たと思ったのか彼はベットから出ていってしまい次の日に帰ってくることはなかった。
それでも、私は大丈夫。
彼がまた帰ってきてくれることを私は知っているから。

悪魔みたいな人から逃げてきた。
これで4回目。
毎回県もまたいで毎回別の住居も確保して毎回髪型も髪色も、服装も、口調も変えてそれこそ本当の自分が分からなくなるくらいバレないように徹してきた。
……なのに。
アパートのポストには一通の手紙。
『逃げても無駄だよ。私は絶対にあなたを逃がさない。さぁ、帰ってきて。 あなたの愛する私より♡』
恐怖で息を飲んだ。
4回目だぞ。
また、あいつの元に行かないといけないのか……。
でも、行かなければ何をされるか……。
その日すぐにアパートを解約してアルバイトも辞めてあいつの元に行った。
「あっ……おかえりなさい」
……心底怖かった。
なんでそんなことが言えるのか自分には分からなかった。
でも、逆らえる勇気なんてないから
「……ただいま」
そう言うしかない。
それから3日立った。
次の住居も仕事も見つけた。
今ならいけると深夜、奴が寝ているのを確認して家を出た。
でも、出ていく直前に声がしたのを俺は聞き逃さなかった。
「またね。」

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