「これいくらですか? そう言えば、どうやって払ったんですか?」
「一人二万よ。カードを使わせてもらった」
「二万!」驚いたが、真に驚くべきはそちらではなかった。いつの間に僕のクレジットカードを使ったというのだろう。恐ろしい女である。もはやジャイアンとスネ夫より絶対的な主従関係になっている。
そうしているうちにえみは食べ終えてしまい、セットだったのかわからないが、パックの日本酒を飲み始めた。グラスになんて注がずに、そのままいっている。
するとベルが鳴った。また来客のようだ。えみは嬉しそうに開錠すると、三人の男が台車を押して入ってきた。三人とも料理人の格好をしている。
「なんですか、これ」
「『カニを食べる』よ。カニフルコースよ」えみが大きくガッツポーズした。まさかのリストの二枚抜きだ。
男たちが準備を始める。ガスコンロを出し、鍋を置いてカット済みの具を入れ始めた。そこからやるらしい。出前専門の料理人なのだろう。手際がものすごくよい。
「カニ食っべいこう~、カニ食っべいこう~♪」
えみがパフィーの名曲を大声で歌いながら、闇雲に振り付けまでしている。あまりに楽しそうなので一緒にやろうかと思ったが、なんとか制止した。そこまで落ちぶれてはいなかった。
何時間待つのかと思ったが、一品目として作り置きの刺身がすぐに出てきた。カニ刺しというらしい。ゴマの入った味噌だれでいただいた。
「美味しい! 冷えるわ!」
えみが歓喜しながら一気に流し込む。たしかに初めての触感だが、美味しい。
その後、茶碗蒸し、姿作り、焼きガニと次々出てきた。とんでもないコース料理らしい。
そしていよいよメインの鍋が登場した。白菜やネギはもちろんだが、カニの全ての部位が惜しげもなく入っている。季節はもう春が近いが、まだ寒さも残っていて、体に染みる時期だ。
「こう見てるとわたしも鍋に飛び込みたくなるよね」えみが鍋を覗き込んで言う。
あなたが入ったら豚鍋になりますよ、と言おうと思ったけど言わなかった。料理人の前なので、なんとかこらえた。
大きな土鍋に入っていた具材だが、二人で矢継ぎ早に食べていくと、瞬く間になくなってしまった。懐石料理の一式を食べた後なのに、スピードが落ちなかった。むしろ食べれば食べるほど箸が進むような感覚もあった。
「一人二万よ。カードを使わせてもらった」
「二万!」驚いたが、真に驚くべきはそちらではなかった。いつの間に僕のクレジットカードを使ったというのだろう。恐ろしい女である。もはやジャイアンとスネ夫より絶対的な主従関係になっている。
そうしているうちにえみは食べ終えてしまい、セットだったのかわからないが、パックの日本酒を飲み始めた。グラスになんて注がずに、そのままいっている。
するとベルが鳴った。また来客のようだ。えみは嬉しそうに開錠すると、三人の男が台車を押して入ってきた。三人とも料理人の格好をしている。
「なんですか、これ」
「『カニを食べる』よ。カニフルコースよ」えみが大きくガッツポーズした。まさかのリストの二枚抜きだ。
男たちが準備を始める。ガスコンロを出し、鍋を置いてカット済みの具を入れ始めた。そこからやるらしい。出前専門の料理人なのだろう。手際がものすごくよい。
「カニ食っべいこう~、カニ食っべいこう~♪」
えみがパフィーの名曲を大声で歌いながら、闇雲に振り付けまでしている。あまりに楽しそうなので一緒にやろうかと思ったが、なんとか制止した。そこまで落ちぶれてはいなかった。
何時間待つのかと思ったが、一品目として作り置きの刺身がすぐに出てきた。カニ刺しというらしい。ゴマの入った味噌だれでいただいた。
「美味しい! 冷えるわ!」
えみが歓喜しながら一気に流し込む。たしかに初めての触感だが、美味しい。
その後、茶碗蒸し、姿作り、焼きガニと次々出てきた。とんでもないコース料理らしい。
そしていよいよメインの鍋が登場した。白菜やネギはもちろんだが、カニの全ての部位が惜しげもなく入っている。季節はもう春が近いが、まだ寒さも残っていて、体に染みる時期だ。
「こう見てるとわたしも鍋に飛び込みたくなるよね」えみが鍋を覗き込んで言う。
あなたが入ったら豚鍋になりますよ、と言おうと思ったけど言わなかった。料理人の前なので、なんとかこらえた。
大きな土鍋に入っていた具材だが、二人で矢継ぎ早に食べていくと、瞬く間になくなってしまった。懐石料理の一式を食べた後なのに、スピードが落ちなかった。むしろ食べれば食べるほど箸が進むような感覚もあった。