恐ろしいことに、一時間もすると粗方片付いてしまった。と言っても片づけた以上にゴミ袋が蓄積したので全然片付いてはいないが、達成感はある。本気になったら意外とできるものだ。
「疲れた。大仕事だったね。もう寝よう」
破壊神は静かにつぶやき、ベッドに横たわった。そして瞬く間に眠りについた。あらゆる欲望に忠実だ。
僕は唯一の寝る場所を奪われた。ベッドの隙間にお邪魔して寝ることも考えたが、寝返りを一度打たれただけで宙に放り出されそうなのでやめておいた。仕方なく、座布団に横たわり、電気を消した。
長い一日が終わった。
息苦しさで目を覚ました。気が付くと、えみが見下ろしていた。僕はえみの足の裏で喉を圧迫されていた。
「早く起きるわよー」
のんびりとした声に続き、また足の裏で喉が圧迫された。
「やめろ! 殺す気か」僕はむせながら飛び起きた。蟻の気持ちが少しわかった。人間とは忌むべき生き物だ。
「なんだ。まだ一割くらいの力なのに」えみという名の鬼が残念そうに言う。
僕は呼吸を整えながら時計を確認する。十一時だ。すっかり寝てしまった。
「もうすぐお昼だから出かけるわよ」
「どこへ?」
「『食べログナンバー1のお店でラーメンを食べる』よ」
えみが大げさに言い放った。つくづく思うが、えみはやたらリスト達成に前向きだ。本人より前のめりである。もはや誰のためのリストかわからなくなってくる。
「ありがとう」ひとまず感謝した。礼を尽くすのが日本人だ。
「ただね、調べたんだけど、ナンバー1のお店は、松戸なのよ」
えみがスマホを開きながら言う。たしかに、ナンバー1はしばらく千葉の醤油ラーメンだ。
「ナンバー2は小田原」
最近めきめきと力をつけてきた神奈川の新興の塩ラーメン。
「どちらも一時間以上かかるけど、行く?」
「そりゃ行くでしょ。松江とか松山とかなら諦めるけど。松戸くらいなら」
「いや、行くまで一時間かかるよ? そこから確実に並ぶからね? 食べるまで計三時間くらいかかるかもよ?」
途端に面倒になってきた。元々性格的には、美味しいお店に並ぶより、少し美味しいお店で並ばず食べたいタイプだ。そのため、今までほとんど並んだことがない。だからこそのリストだが、そこまでこだわりもない。
「上位層の星の差なんて、コンマいくつしか違わないからね? 誤差みたいなもんよ?」
「疲れた。大仕事だったね。もう寝よう」
破壊神は静かにつぶやき、ベッドに横たわった。そして瞬く間に眠りについた。あらゆる欲望に忠実だ。
僕は唯一の寝る場所を奪われた。ベッドの隙間にお邪魔して寝ることも考えたが、寝返りを一度打たれただけで宙に放り出されそうなのでやめておいた。仕方なく、座布団に横たわり、電気を消した。
長い一日が終わった。
息苦しさで目を覚ました。気が付くと、えみが見下ろしていた。僕はえみの足の裏で喉を圧迫されていた。
「早く起きるわよー」
のんびりとした声に続き、また足の裏で喉が圧迫された。
「やめろ! 殺す気か」僕はむせながら飛び起きた。蟻の気持ちが少しわかった。人間とは忌むべき生き物だ。
「なんだ。まだ一割くらいの力なのに」えみという名の鬼が残念そうに言う。
僕は呼吸を整えながら時計を確認する。十一時だ。すっかり寝てしまった。
「もうすぐお昼だから出かけるわよ」
「どこへ?」
「『食べログナンバー1のお店でラーメンを食べる』よ」
えみが大げさに言い放った。つくづく思うが、えみはやたらリスト達成に前向きだ。本人より前のめりである。もはや誰のためのリストかわからなくなってくる。
「ありがとう」ひとまず感謝した。礼を尽くすのが日本人だ。
「ただね、調べたんだけど、ナンバー1のお店は、松戸なのよ」
えみがスマホを開きながら言う。たしかに、ナンバー1はしばらく千葉の醤油ラーメンだ。
「ナンバー2は小田原」
最近めきめきと力をつけてきた神奈川の新興の塩ラーメン。
「どちらも一時間以上かかるけど、行く?」
「そりゃ行くでしょ。松江とか松山とかなら諦めるけど。松戸くらいなら」
「いや、行くまで一時間かかるよ? そこから確実に並ぶからね? 食べるまで計三時間くらいかかるかもよ?」
途端に面倒になってきた。元々性格的には、美味しいお店に並ぶより、少し美味しいお店で並ばず食べたいタイプだ。そのため、今までほとんど並んだことがない。だからこそのリストだが、そこまでこだわりもない。
「上位層の星の差なんて、コンマいくつしか違わないからね? 誤差みたいなもんよ?」