ここはソラが建てた新しい屋敷で、私の部屋も用意されている。
ソラは、本当に優しい。
私のなにもかもを受け入れてくれた。
だからこそ、話さなければならない。
魔王が、どういう存在であったかを。
みんなで昼の食事を終えたあとの、ティータイム。
いろんな話に花が咲いているが、私は言わなければならなかった。
私は、イスを引いて立ち上がる。
「みんな、聞いてほしいことがあるの」
お喋りが止まり、みんながこちらを見た。
胸がどきりとする。
けれども、黙っているわけにはいかない。
「私は勇者どもに倒されるまで、この大陸の魔物を率いていた」
「あいつの言っていた、魔王というやつだな」
フェリスの言葉に、サレンは頷いた。
「人間は、私のことをそう呼んでた。私がやったことは、魔物を束ねて人間に抗う、ただそれだけ。王と呼ばれるべき存在だったのかはわからない」
そう言ってサレンは、小さなこぶしを握る。
みんな格別驚いた様子は見せないが、じっと私の次の言葉を待っていた。
「魔物には当然、強い者もいれば弱い者もいる。悪魔の森はどうなのか知らないけれど、外の世界では魔物は人間に狙われる。だから強い力を持った庇護者が必要だった。それが私」
ソラも、真剣に話を聞いている。
「でも、勇者どもに〈魔力核〉を奪われて、その力を失ってしまった」
「〈魔力核〉?」
ソラの問いに、私は答える。
「その名のとおり、強力な魔力の源。それを取り戻さなければ、魔物はまた人間に狙われるだけの存在になってしまう。だから私はソラを利用して、勇者どもから〈魔力核〉を取り戻す手伝いをさせようとした……」
思い切って、言った。
「今まで騙してて、ごめんなさい……!」
大きく頭を下げた。
最初に口を開いたのは、リュカだった。
「頭を、上げてちょうだい」
リュカは優しく言った。
「巨大な勢力に対して、統率を取るのはとても大切なことだわ。縄張りさえはっきりさせれば、争いは減るもの。あなたは責任を果たそうと頑張っていたのね」
「でも、他にやりようはなかったのではなくて? 自分の次に実力を持った魔物に、権力を引き渡しても良かったのですし。お兄さまを利用する計画は、あなたの傲慢にも思えますわ。それに……」
フウカの言葉を、フェリスが遮った。