わたしは今までのことを一気に思い出したら、顔がだんだんと火照って、申し訳なさで萎縮してしまい、体を海老のように折り曲げて、ベッドで丸まってしまった。
スマホ越しに、塩川さんの『間宮さん! 本当に大丈夫!?』という声が響く。……本当に、塩川さんに対しても申し訳がなさすぎる。
「ごめんなさい、塩川さん……あのとき、わたしが勝手に跳ねられただけで、皆悪くなかったのに……」
『え、間宮さん……思い出したの?』
「うん……塩田さんから話を聞いたら……皆にひどいことしちゃったから、明日顔を合わせにくい」
沙羅ちゃんは蝉川くんに対して明らかに怒っていたのは、わたしの記憶喪失の事情を、既にお母さんから聞いていたせいだろう。わたしを刺激したくなかったんだと思う。多分は絵美ちゃんも。
退院してから滝くんとしゃべる機会が増えたのは、もしかしたら、隣に蝉川くんがいたから、少しでも彼がわたしの近くにいても自然になるよう気を遣っていた……って考えるのは、わたしに都合がよすぎるのかな。
蝉川くんは、わたしが全部忘れちゃったのにずっと横にいてくれたのはなんでなんだろう。
それだけは、わたしはどうしてもわからなかった。
わたしがぐるぐる考えていると、スマホ越しに『ふう』と塩田さんの溜息が耳に入った。
『ちゃんと、蝉っちに告白、したほうがいいと思うよ。間宮さんは』
「……っ! わ、わたし……あれだけ迷惑かけたのに……どうして今更、思い出したからって、そんなこと言え……」
『あたしねえ、蝉っちに告白したけど、フラれちゃったんだよねえ』
そうしみじみとした口調で言う塩田さんに、わたしは思わず目を瞬かせた。
塩田さんは見た目は派手だけれど、わたしなんかよりもよっぽど機微のわかっている子だし、面倒見だっていい。性格無茶苦茶いい子なのに……。
『んー、フラれた理由を言っちゃうのは、蝉っちに対してフェアじゃないから言わない。でも間宮さんがネガネガしく考えることじゃないと思うなあ』
「で、でも……その、わたし、なんか……」
『案外、自分のいいところなんて自分だとわっかんないもんだからなあ。蝉っちだっていいところいっぱいあるけど、ぜーんぶ無自覚なんだもん。間宮さんだってそうだよ。ダイジョブダイジョブ、当たっても砕けたりしないから。あ、あたしに悪いとか思わなくっていいよー? あたし、もう新しい彼氏できてるからさ』
そう言い残して、一方的に塩田さんに電話を切られてしまった。わたしはようやくスマホを持ったまま、ベッドに大の字になって寝っ転がり、考え直す。
本当に、明日どんな顔で皆に会えばいいんだろう。
なによりも、蝉川くんと顔を合わせて、まともにしゃべれるんだろうか。
わたしはのろのろと制服のスカートに手を突っ込むと、生徒手帳を取り出した。
笑顔でにこにこ笑っている蝉川くんと、ぎこちなく引きつった顔をしているブサイクなわたしのプリントシール。
きっと、蝉川くんのことを覚えていたら、プリントシールだって撮る勇気はなかった。どんなに格好いいなと思っても、その人と一緒にずっとい続けることは、今の心地いい関係を壊すような気がして、どうしても踏ん切りが付かない。
あんなに迷惑かけたんだから、都合よく告白なんてできないよ。塩田さんに背中を押してもらっても、だ。
せめて記憶が戻ったことくらいは、伝えたいなあ。
わたしはそう思いながら、生徒手帳を抱きしめた。
スマホ越しに、塩川さんの『間宮さん! 本当に大丈夫!?』という声が響く。……本当に、塩川さんに対しても申し訳がなさすぎる。
「ごめんなさい、塩川さん……あのとき、わたしが勝手に跳ねられただけで、皆悪くなかったのに……」
『え、間宮さん……思い出したの?』
「うん……塩田さんから話を聞いたら……皆にひどいことしちゃったから、明日顔を合わせにくい」
沙羅ちゃんは蝉川くんに対して明らかに怒っていたのは、わたしの記憶喪失の事情を、既にお母さんから聞いていたせいだろう。わたしを刺激したくなかったんだと思う。多分は絵美ちゃんも。
退院してから滝くんとしゃべる機会が増えたのは、もしかしたら、隣に蝉川くんがいたから、少しでも彼がわたしの近くにいても自然になるよう気を遣っていた……って考えるのは、わたしに都合がよすぎるのかな。
蝉川くんは、わたしが全部忘れちゃったのにずっと横にいてくれたのはなんでなんだろう。
それだけは、わたしはどうしてもわからなかった。
わたしがぐるぐる考えていると、スマホ越しに『ふう』と塩田さんの溜息が耳に入った。
『ちゃんと、蝉っちに告白、したほうがいいと思うよ。間宮さんは』
「……っ! わ、わたし……あれだけ迷惑かけたのに……どうして今更、思い出したからって、そんなこと言え……」
『あたしねえ、蝉っちに告白したけど、フラれちゃったんだよねえ』
そうしみじみとした口調で言う塩田さんに、わたしは思わず目を瞬かせた。
塩田さんは見た目は派手だけれど、わたしなんかよりもよっぽど機微のわかっている子だし、面倒見だっていい。性格無茶苦茶いい子なのに……。
『んー、フラれた理由を言っちゃうのは、蝉っちに対してフェアじゃないから言わない。でも間宮さんがネガネガしく考えることじゃないと思うなあ』
「で、でも……その、わたし、なんか……」
『案外、自分のいいところなんて自分だとわっかんないもんだからなあ。蝉っちだっていいところいっぱいあるけど、ぜーんぶ無自覚なんだもん。間宮さんだってそうだよ。ダイジョブダイジョブ、当たっても砕けたりしないから。あ、あたしに悪いとか思わなくっていいよー? あたし、もう新しい彼氏できてるからさ』
そう言い残して、一方的に塩田さんに電話を切られてしまった。わたしはようやくスマホを持ったまま、ベッドに大の字になって寝っ転がり、考え直す。
本当に、明日どんな顔で皆に会えばいいんだろう。
なによりも、蝉川くんと顔を合わせて、まともにしゃべれるんだろうか。
わたしはのろのろと制服のスカートに手を突っ込むと、生徒手帳を取り出した。
笑顔でにこにこ笑っている蝉川くんと、ぎこちなく引きつった顔をしているブサイクなわたしのプリントシール。
きっと、蝉川くんのことを覚えていたら、プリントシールだって撮る勇気はなかった。どんなに格好いいなと思っても、その人と一緒にずっとい続けることは、今の心地いい関係を壊すような気がして、どうしても踏ん切りが付かない。
あんなに迷惑かけたんだから、都合よく告白なんてできないよ。塩田さんに背中を押してもらっても、だ。
せめて記憶が戻ったことくらいは、伝えたいなあ。
わたしはそう思いながら、生徒手帳を抱きしめた。