「ねえ、何あれ。見せびらかしてるつもりなわけ?」



苛立ちを声と、眉間の皺ではっきり表しながら明日香が言う。

その視線を辿った先にいたのは、廊下で向かい合う詩織と雨宮。


面倒そうに壁に背を預ける雨宮と、腕を組んでその前に立ち塞がる詩織の空気はどちらかと言うと険悪そうだ。

それでも痴話喧嘩の相手がいるだけで充分マウントを取っているのだから、明日香の言葉も間違ってない。



「彼氏いますアピールやば〜」

「上手くいってないなら別れろよ」

「ほんと。はよ」



伝言ゲームのように愚痴をこぼすみんなに合わせるように、ね、と口にする。

たった一音でも同調を意味する言葉を、周りに聞かれたくなくて声を低めてしまった。


明日香の机の周りに集まっているのは、同じクラスのいつものメンバー。

みんな廊下に面した窓から身を乗り出すようにして、詩織と雨宮の様子を伺っている。


あ、と明日香が何かを思い出したようにこっちを見た。



「別に、詩織のこと悪く言ってるわけじゃないから。嫌いとかじゃないし」

「え、あ、うん」



なぜかフォローを入れられて、反射的に頷いてから言葉の意味を考える。

戸惑いが伝わったのか、明日香は溜め息に似た少し長い呼吸をしてから口を開いた。



「真衣ってテニス部だったじゃん。詩織と同じで」

「うん」

「同じ部活だったなら、」