互いに警戒を解いたところで、彼のことを教えてもらった。
 名前は樹生(タツキ)、日本人の留学生で学年は同じ二年。海外は初めて。ロンドンから南へ一時間のこの街とうちの大学を選んだのは自分の成績で行ける課程があったのと、海があるからだと言った。
 俺の名前も聞かれ、時期相応の補足付きで返事する。
「リオ。来年のオリンピック都市と同じね」
 そこからロンドン大会は観たのかなど無難な話も始まった。
「次は日本か。君は簡単に生観戦できるな」
「君だって観に来れるじゃん」
「案内してくれるの?」
 場のノリで言ったらタツキの目元が赤くなった。
「それは楽しいと思うけど、俺東京に住んでるわけじゃないし……」
 謝るように言われ、ドキッとした。