俺より2インチほど低い身長、黒くて丸い目、幼さが残る顔。短く切った硬そうな黒髪、このアクセントの付け方。
 おそらく。
「What makes you say that?」※
 彼は瞬きをしてさっと赤くなった。流暢な英語に驚いたのか。
 返事はない。
「……気にしないで。こんな見た目だし、慣れてる。でも……」
 改めて彼を向く。
「そういうこと初対面で訊かれると気分を害する人もいるって、覚えといたほうがいいよ。イギリス(こっち)に住むなら」
 厳しく言ったつもりはなかったけど、彼は体を小さく震わせた。
「……ごめん。来たばかりで心細くて……友達がいればって思って」
エクスチェンジ(交換留学)?」
イヤー・アブロード(休学)。と言っても半年だけど。三月まで」
「そうか」
 彼の言葉を切る。
「でも残念、俺はこう見えてイギリス人だよ。入学の時証明するのが面倒だったけど。正確には『ハーフ』。母親が日本人。日本語はできるけど英語のほうが心地いい。これで疑問は晴れた?」
「だから、ごめんって。思い込みが過ぎた……」
 気を悪くしたのか場を去ろうとした彼に、俺は「待って」と呼び止めた。
「同類じゃなくても、友達にはなれるよ?」

※「どうしてそう思うの?」