とやりだした。この若輩の非常勤講師にとっては、ストライキも放射能汚染も、一切が別世界の出来事なのだ。授業を行おうと、やめようと、報酬に差障りのない限り、どちらでもいいのだ。彼には、命を、誠意を、体をかける対象が何一つない。毎日、いい加減に暮らしているのだ。陳腐なダジャレ、歯切れの悪い講義。彼が授業をあえてやったのは、学生の提案を全く問題意識もなく受け入れることで、自分の意思が授業の取りやめに全く関与しないことに、抵抗があったからなのだ。
授業が終わってから、銀杏の青葉が、空を埋めている並木道に行ってみた。暇を持て余し、スマートフォンもタブレットも持っていない、パチンコをやる趣味もない、ガラケーしかもっていない、アルバイトにあぶれ、喫茶店にしけこむ相手もいない、流行に遅れまいとしている学生の群れが、並木道に屯していた。
あいもかわらず、鵞鳥の喉を締め付けたようなアジテーション演説が続いていた。アジテーションの興奮に我を忘れた男が、セリフをど忘れした舞台の上の三文役者のように、声を詰まらせ、白けた雰囲気が学生大会を占領し始めると、あわててハンドマイクを拝むようにして両手で持ち、泣きそうな顔をして、声を嗄らせて、同じことを繰り返して叫んだ。
あの夥しい学生の群れ。そして、一握りのアジテーション演説家たち。更に、
「ストを回避して学校側と話し合うべきだ」
(いったい、なにを?)
と言う反抗に反抗するグループ。
皆が何かを求めていた。この一見果てしのない日常性の強靭な枠を突き破る何かを。有り余って仕方のない、使い道のない青春の血潮の処理を、何かとてつもない椿事に委ねようとしている。
「ストライキを回避して話し合うべきだ」
という主張のアジテーションビラが配られた。でも、何のためにストライキを回避しなければならないのか?その説明がない。
「勉強したい」
というのが理由のようだけど、勉強なら大学でなくてもできる。勉強したいというのは少数だ。皆、出席をとる講義しか出席しない。出席してもお喋りしているか、スマホを弄っているか、寝ているか、誰もノートをとっていない。そこで曲先の歌が生まれる。曲がなければバカみたいな歌詞だ。
スマホはいらない ママ
ときめきなんかないの
好きなの どうなの
書きこめばすぐにでもわかる
やきもきしないで
授業が終わってから、銀杏の青葉が、空を埋めている並木道に行ってみた。暇を持て余し、スマートフォンもタブレットも持っていない、パチンコをやる趣味もない、ガラケーしかもっていない、アルバイトにあぶれ、喫茶店にしけこむ相手もいない、流行に遅れまいとしている学生の群れが、並木道に屯していた。
あいもかわらず、鵞鳥の喉を締め付けたようなアジテーション演説が続いていた。アジテーションの興奮に我を忘れた男が、セリフをど忘れした舞台の上の三文役者のように、声を詰まらせ、白けた雰囲気が学生大会を占領し始めると、あわててハンドマイクを拝むようにして両手で持ち、泣きそうな顔をして、声を嗄らせて、同じことを繰り返して叫んだ。
あの夥しい学生の群れ。そして、一握りのアジテーション演説家たち。更に、
「ストを回避して学校側と話し合うべきだ」
(いったい、なにを?)
と言う反抗に反抗するグループ。
皆が何かを求めていた。この一見果てしのない日常性の強靭な枠を突き破る何かを。有り余って仕方のない、使い道のない青春の血潮の処理を、何かとてつもない椿事に委ねようとしている。
「ストライキを回避して話し合うべきだ」
という主張のアジテーションビラが配られた。でも、何のためにストライキを回避しなければならないのか?その説明がない。
「勉強したい」
というのが理由のようだけど、勉強なら大学でなくてもできる。勉強したいというのは少数だ。皆、出席をとる講義しか出席しない。出席してもお喋りしているか、スマホを弄っているか、寝ているか、誰もノートをとっていない。そこで曲先の歌が生まれる。曲がなければバカみたいな歌詞だ。
スマホはいらない ママ
ときめきなんかないの
好きなの どうなの
書きこめばすぐにでもわかる
やきもきしないで