血を流してたお袋
ビール瓶のかけらを持って
家を出て行った親父
星も見えない真っ暗な夜
薄ら寒い風が吹いていた
巡る季節に春があり
心の傷はいつか癒えても
もう戻らないわたしの
失われた青春
親戚達が集まった
口汚くののしる二人
叔父も叔母も去って行った
壁に血糊のへばりつく部屋
障子が破れかけていた
ほんのひととき夢を抱き
心の傷を忘れかけても
もう戻らないわたしの
失われた青春
友達はいま旅の空
風邪で休むと嘘を告げた
夏にわたしは町の工場
回る機械の耳を裂く音
頬を伝う熱い涙汗
巡る季節に秋があり
心の傷は紛らわせても
もう戻らないわたしの
失われた青春
昼に着いて、ぼそぼその手打ちそばと青臭い山菜の昼食を取り、天井の異様に高い鄙びた温泉に浸かって、夕食前に、少し山の上の方に上ってみた。様々な高山植物が繚乱と咲き乱れていたが、それらの名称を知らないわたしにとって、山の原風景は無秩序なだけで、酷く貧しく映った。ただ、岩の裂け目からチョロチョロと流れ出していた清水は美味しかった。もう真夏だから残雪のある訳はないのだが雪解け水のように冷ややかだった。そこで、『春夏秋冬 屋形船』の深野義和が絶賛した歌が生まれる。
うづき 桜見 花だより
春も爛漫 おぼろ月
淡い緑の 面影に
君をいだけば
春が来る
さつき 矢車 鯉のぼり
風もそよ吹く ほととぎす
深い緑の したたりに
涙落とせば
春は行く
赤いみなづき 花菖蒲
雨もさやかに 衣がえ
頬に流れる さみだれに
傘をかざせば
夏が来る
紅はふみづき ねむの花
星もきらめく 天の川
涼を求めて 夕立に
軒を借りれば
夏は行く
ビール瓶のかけらを持って
家を出て行った親父
星も見えない真っ暗な夜
薄ら寒い風が吹いていた
巡る季節に春があり
心の傷はいつか癒えても
もう戻らないわたしの
失われた青春
親戚達が集まった
口汚くののしる二人
叔父も叔母も去って行った
壁に血糊のへばりつく部屋
障子が破れかけていた
ほんのひととき夢を抱き
心の傷を忘れかけても
もう戻らないわたしの
失われた青春
友達はいま旅の空
風邪で休むと嘘を告げた
夏にわたしは町の工場
回る機械の耳を裂く音
頬を伝う熱い涙汗
巡る季節に秋があり
心の傷は紛らわせても
もう戻らないわたしの
失われた青春
昼に着いて、ぼそぼその手打ちそばと青臭い山菜の昼食を取り、天井の異様に高い鄙びた温泉に浸かって、夕食前に、少し山の上の方に上ってみた。様々な高山植物が繚乱と咲き乱れていたが、それらの名称を知らないわたしにとって、山の原風景は無秩序なだけで、酷く貧しく映った。ただ、岩の裂け目からチョロチョロと流れ出していた清水は美味しかった。もう真夏だから残雪のある訳はないのだが雪解け水のように冷ややかだった。そこで、『春夏秋冬 屋形船』の深野義和が絶賛した歌が生まれる。
うづき 桜見 花だより
春も爛漫 おぼろ月
淡い緑の 面影に
君をいだけば
春が来る
さつき 矢車 鯉のぼり
風もそよ吹く ほととぎす
深い緑の したたりに
涙落とせば
春は行く
赤いみなづき 花菖蒲
雨もさやかに 衣がえ
頬に流れる さみだれに
傘をかざせば
夏が来る
紅はふみづき ねむの花
星もきらめく 天の川
涼を求めて 夕立に
軒を借りれば
夏は行く


