千鶴子の歌謡日記

   幸せな 愛の季節は
  足跡すらも残さずに 教会の鐘の
   響きと ともにすべて去り行く
    ring the bell 貴男が鳴らした
    ring the bell わたしの心の 
    ring the bell 罪深い愛      
  クリスマス 午後の十二時
  マリアの前に ひれ伏すわたし
   ああ 神よ あなたの目には
   なんと 罪深い わたしの愛でしょう

  今のわたしは ただひたすらに すべてを捨てて
   どこまでも 信じ寄り添い
  慕い続けることのほか 僧院を出て
   貴男を 愛すことができない
    ring the bell 貴男が鳴らした
    ring the bell わたしの心の 
    ring the bell 罪深い愛      
  洗礼の 誓い振り捨て
  チャペルの前に佇むわたし
   ああ 神よ あなたの目には
   なんと 罪深い わたしの愛でしょう

 教会には数回行ったことがある。山下達郎の『クリスマス・イブ』の教会では荘厳な雰囲気にのまれた。カール・マルクスが、
「宗教はアヘンだ」
と言った意味が分かるような気がした。日曜教会のチャリティはNPOの原型だ。わたしは意味のない同調が嫌いだから、すぐ行くのをやめた。聖書研究会に参加して、
「どう生きていいのかわからない」
とわたしが言うと、牧師は、
「あなたのような人はたくさんいます」
と言ったので、それ以降、参加するのをやめた。わたしはわたしでありたいのだ。ONE OF THEMは耐えられない。ONE FOR ALL, ALL FOR ONEにも、まやかしを感じる。そこで、ジャン=ジャック・アノー監督の『薔薇の名前』のような歌が生まれる。

  少女は嵐に遭って
  古い教会に辿り着いた
  教会に神父が一人
  長いローソクを持って迎えた
   そのとき声が 少年の声が
   高い塔から聞こえてきた
   「神父は悪魔 神父は悪魔
    悪魔 悪魔 悪魔」
  少女は神父に聞いた
  「あれは あの声は何ですか」
  だけど神父は黙っていた

  少女は夜中に起きて
  古い教会の塔の上へ
  階段の一番上に
  鉄の牢獄があるのを見つけた
   そのとき声が 少年の声が
   古い牢から聞こえてきた