今、わたしの脳裏を様々な情愛が、仄暗い走馬灯のように駆け巡る。自らの血のゆえに、儚さに埋もれた過去。別れたくはなかったのに、一方的に別れてしまった人々。その裏切りの思い出が、プレパラート用に切り刻まれた肉片のように胸に甦る。また、黄昏のワルツが始まった。ああ、果敢ないわたしという命。その果敢なさを日常性に強奪されたときの、わたしの愁眉が瞼に浮かぶ。生得の血の悲しさのゆえに、ボヘミアンとしてのわたしの真の生命はあとわずか。わたしが今のように美しく、男を愛すことを厭い、男に愛されることのみを望む間だけ。与えるだけの、愛するだけの、わたしの愛を決して求めない、神のように無償に愛し、太陽のように赫々と輝く人はいないものだろうか?アルチュール・ランボーの『永遠』のような。そこで春を秋に置き換えた歌が生まれる。
秋が 燃える
秋が 燃える
赤く 赤く
秋が 燃える
あれは永い 永い年月
僕が探して 来たものさ
秋が 燃える
秋が 燃える
赤く 赤く
秋が 燃える
海が 燃える
海が 燃える
蒼く 蒼く
海が 燃える
時を超えて 入り日に延びる
黄金色した 波の橋
海が 燃える
海が 燃える
蒼く 蒼く
海が 燃える
秋が 沈む
海に 沈む
時を 止めて
秋が 海に
それはほんの ほんのひととき
永遠という ものなのさ
秋が 沈む
海に 沈む
時を 止めて
秋が 海に
四月二十七日
授業が始まってから一週間が過ぎた。灰色の校舎を目の前にしただけで、わたしは、ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』に捕まえられたように滅入る。何のために来ているのか分からない。・・・いわば、わたしの現存在は、不本来態にあるのだ。そして、訳の分からにものに束縛されている。それは、不安でもなければ、気がかりでも無い。わたしの生命力は今、最低の状態に在る。わたしは、走ってくる自動車が速度を落とすのを確かめずに、駅前の横断歩道を渡る。自動車がわたしの傍らに停車すると、わたしは、
「なぜ、わたしを轢いてくれないのだろう」
秋が 燃える
秋が 燃える
赤く 赤く
秋が 燃える
あれは永い 永い年月
僕が探して 来たものさ
秋が 燃える
秋が 燃える
赤く 赤く
秋が 燃える
海が 燃える
海が 燃える
蒼く 蒼く
海が 燃える
時を超えて 入り日に延びる
黄金色した 波の橋
海が 燃える
海が 燃える
蒼く 蒼く
海が 燃える
秋が 沈む
海に 沈む
時を 止めて
秋が 海に
それはほんの ほんのひととき
永遠という ものなのさ
秋が 沈む
海に 沈む
時を 止めて
秋が 海に
四月二十七日
授業が始まってから一週間が過ぎた。灰色の校舎を目の前にしただけで、わたしは、ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』に捕まえられたように滅入る。何のために来ているのか分からない。・・・いわば、わたしの現存在は、不本来態にあるのだ。そして、訳の分からにものに束縛されている。それは、不安でもなければ、気がかりでも無い。わたしの生命力は今、最低の状態に在る。わたしは、走ってくる自動車が速度を落とすのを確かめずに、駅前の横断歩道を渡る。自動車がわたしの傍らに停車すると、わたしは、
「なぜ、わたしを轢いてくれないのだろう」