と繰り言をいう。頬にキスされても、あまり嬉しくない。だって、頬は、あまり感じないから。いたいけなガールという花は、夏になるまで蜜蜂の様に、自分の花園に迷い込んだ男の人の中から、見目麗しい王子様を探そうとする。だから時々、宝塚に憧れて、男の子に身を窶すことに度外れた興奮を覚える。そして、どういうわけか、男装の麗人になって、美しい女性に抱かれたり、可愛らしい女の子を抱きしめたりしたいと思うこともある。だけどそれは、とっても純で可愛らしい男の子。軈て、ガールは、強く逞しい王子様に激しく愛されたいと願うようになる。そして、次第にガールではなくなる。
レディ、それは、とろけるような柔らかな蜜の味。お風呂で自分の体を洗う時でも、白居易の『長恨歌』の楊貴妃のようにうっとりするような滑らかな凝脂の塊。本当はとてつもないお喋りのくせに、好きな男の人の前ではすまし顔で、今まで笑っていたかと思うと急に大声で泣き出す。そう、自分で自分がよく分らない。二人で街を歩いているとき、ふと強く抱き締められたいと思う。離れているときは、不意に会いたくなり、無性に声が聴きたくなる。
彼が言っていたけれど、女の人の心理はほろ酔い気分だって。そう。そういえないこともない。たとえば、フランク永井の『おまえに』のような、甘美な音楽、とろけるような甘い調べ、男の人のソフトな低い声、紅茶にたらしたブランデーのほろ苦さ、ソファーの柔らかなクッション、シャルル・マルタン・エミール・ガレの円やかなガラス照明、髪をもてあそぶ手の愛撫、・・・そんな他愛のないものに、自分で自分がどうにもならないほどに酔ってしまうことがある。日頃は、とっても慎み深いんだけど、いざとなったら命を懸けて(もちろん、表面だけだけど)、
「すてないで!」
レディ、それは、とろけるような柔らかな蜜の味。お風呂で自分の体を洗う時でも、白居易の『長恨歌』の楊貴妃のようにうっとりするような滑らかな凝脂の塊。本当はとてつもないお喋りのくせに、好きな男の人の前ではすまし顔で、今まで笑っていたかと思うと急に大声で泣き出す。そう、自分で自分がよく分らない。二人で街を歩いているとき、ふと強く抱き締められたいと思う。離れているときは、不意に会いたくなり、無性に声が聴きたくなる。
彼が言っていたけれど、女の人の心理はほろ酔い気分だって。そう。そういえないこともない。たとえば、フランク永井の『おまえに』のような、甘美な音楽、とろけるような甘い調べ、男の人のソフトな低い声、紅茶にたらしたブランデーのほろ苦さ、ソファーの柔らかなクッション、シャルル・マルタン・エミール・ガレの円やかなガラス照明、髪をもてあそぶ手の愛撫、・・・そんな他愛のないものに、自分で自分がどうにもならないほどに酔ってしまうことがある。日頃は、とっても慎み深いんだけど、いざとなったら命を懸けて(もちろん、表面だけだけど)、
「すてないで!」