DNAには善も悪もすべてが包摂されている。悪人を死刑に処して、血筋を断つことはできない。なぜなら、善人のDNAの中に、悪人のDNAが潜んでいるからだ。親が善人でも、子は悪人になる可能性がある。DNAはパンドラの箱だ。人類が存続する限り、悪人は絶えることがない。善人は単に、DNAに秘められた悪人の二重螺旋が顕在化しないだけのことだ。悪人も単に、DNAに刻まれ、畳み込まれた善人の二重螺旋が顕在化しないだけのことだ。悪人は悪の遺伝子が顕在化したことを恨むべきであり、善人は善の遺伝子が顕在化したことを幸運と思うべきだ。
 どの民族にも悪人はいる。なぜなら、最初の人類イヴのDNAの中に善人と悪人の遺伝子が組み込まれていたからだ。神はそのように人間を創造したのだ。
 今日も、DNAに突き動かされていることを認識していない人々がうごめいている。だから、そこで、藤田まさとの『浪花節だよ人生は』のような歌が生まれる。

  男の業 女のさが 
  だから 色恋地獄
  愛憎 曼陀羅
  惚れて 極楽 
  腫れて 往生
  艶歌が 生まれる

  日向の華 日陰の蝶
  だから 嫉妬の業火
  怨恨 阿修羅場
  呪い 護摩壇 
  怨み 骨髄
  怨歌が 始まる

  勝ち戦も 負け戦も
  命 傷つき般若
  笑って 絶望  
  救い 一抹
  望み 一縷を
  援歌に 求める

  その場限り 逃れる嘘
  だから 素人芝居
  見抜かれ 見抜いて
  やつれ あやつり
  舞えば 舞台に
  演歌が 流れる



十二月六日

 ストーカー規制法がある。「ストーカー行為等の規制等に関する法律」という厳しい名称だ。その目的は、「ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資すること」とある。法務省や警察庁の官僚や陣笠代議士や選良の議員たちが知恵を絞った法律だが、肝心なもうひとつの目的が抜けている。