貴方は同時に二人の母を愛すことはできなかった
愛を断たれた、愛を永遠の中に螺鈿のように閉じ込めた貴方の魂は
とうとう演劇の中に宿命的に昇華した
貴方の迸る命の赫々たる燃焼は
いとけなく、愛の汚れを知らず
人々の心の琴線を爪弾く
貴方の清冽な泉のような
滾々と尽きることのない無窮の才能
母への久遠の愛に裏打ちされた無垢な人間性
それは貴方をハリウッドへと導き
かけがえのない伯楽を得る
かつてあなたを子犬のごとくあしらった
虚飾に満ちたハリウッド
銀幕にたかる雀たちは口々に叫ぶ
――尊敬すべき奇跡的新人!
――創造された偉大なる芸術俳優!
――二十年に一人の天才的俳優!
でもひと時として貴方の胸は満たされない
あれほど欲した名声ではあったが、
貴方は安穏な幸福に浸ることはできなかった
母を失ったことが、
貴方の心に空洞を作り
物事に熱中することで忘れようとしても
不図、重い愛の哀惜の化石に触れるとき、
その空洞にいたたまれないほど寂しい風が吹き抜ける
至純な愛の思い出が、穢れた愛を避けさせ
かたくなに心の扉を閉じさせる
一つの愛すらも受け入れられない若者
絶えず自分を何物かに駆り立てずにはいられない孤独の魂
あまりにも純粋なるがゆえに・・・
だが、ある日運命の女性が、
光に溢れた春の日の微風のように
貴方の眼前に現れた乙女
その名は、ピア・アンジェリ
唯一つの水晶のようないたいけな恋物語
陽炎のように果敢ない恋
貴方の心を溶かした生身の天使
初めて亡き母を忘れさせた娘
だが、無二の愛の幼生は崩れた
1954年11月の末
ピアは他の男に嫁いだ
結婚式の教会の外に一人佇み
昔日の思い出にはらはらと涙を流し
崇高な情景の崩壊に愛の形見を喪う
頬を撃つ冷たい風のなかで
枯れ葉の舞に足を絡ませながら
古い愛用のオートバイにしがみつき
憚りもなく声をしのんでむせび泣く
唯一つの至上の宝石
たった一つの生きた愛
熱い涙がオートバイのシートを濡らす
どうせ得られないものならば、
どうして心に灯をつけたのか
全ての愛の偶像、全ての憧憬
それらが悉く地に堕ちた
愛を失った貴方はスピードに挑む
死への恐怖だけが心を癒す
風景が一瞬のうちに遠のき、
風圧が胸を圧すとき
現在は過去に入り交じり
甘い郷愁が涸れ果てた涙を誘う
侵すことのできない母への慕情が
愛を断たれた、愛を永遠の中に螺鈿のように閉じ込めた貴方の魂は
とうとう演劇の中に宿命的に昇華した
貴方の迸る命の赫々たる燃焼は
いとけなく、愛の汚れを知らず
人々の心の琴線を爪弾く
貴方の清冽な泉のような
滾々と尽きることのない無窮の才能
母への久遠の愛に裏打ちされた無垢な人間性
それは貴方をハリウッドへと導き
かけがえのない伯楽を得る
かつてあなたを子犬のごとくあしらった
虚飾に満ちたハリウッド
銀幕にたかる雀たちは口々に叫ぶ
――尊敬すべき奇跡的新人!
――創造された偉大なる芸術俳優!
――二十年に一人の天才的俳優!
でもひと時として貴方の胸は満たされない
あれほど欲した名声ではあったが、
貴方は安穏な幸福に浸ることはできなかった
母を失ったことが、
貴方の心に空洞を作り
物事に熱中することで忘れようとしても
不図、重い愛の哀惜の化石に触れるとき、
その空洞にいたたまれないほど寂しい風が吹き抜ける
至純な愛の思い出が、穢れた愛を避けさせ
かたくなに心の扉を閉じさせる
一つの愛すらも受け入れられない若者
絶えず自分を何物かに駆り立てずにはいられない孤独の魂
あまりにも純粋なるがゆえに・・・
だが、ある日運命の女性が、
光に溢れた春の日の微風のように
貴方の眼前に現れた乙女
その名は、ピア・アンジェリ
唯一つの水晶のようないたいけな恋物語
陽炎のように果敢ない恋
貴方の心を溶かした生身の天使
初めて亡き母を忘れさせた娘
だが、無二の愛の幼生は崩れた
1954年11月の末
ピアは他の男に嫁いだ
結婚式の教会の外に一人佇み
昔日の思い出にはらはらと涙を流し
崇高な情景の崩壊に愛の形見を喪う
頬を撃つ冷たい風のなかで
枯れ葉の舞に足を絡ませながら
古い愛用のオートバイにしがみつき
憚りもなく声をしのんでむせび泣く
唯一つの至上の宝石
たった一つの生きた愛
熱い涙がオートバイのシートを濡らす
どうせ得られないものならば、
どうして心に灯をつけたのか
全ての愛の偶像、全ての憧憬
それらが悉く地に堕ちた
愛を失った貴方はスピードに挑む
死への恐怖だけが心を癒す
風景が一瞬のうちに遠のき、
風圧が胸を圧すとき
現在は過去に入り交じり
甘い郷愁が涸れ果てた涙を誘う
侵すことのできない母への慕情が


