千鶴子の歌謡日記

   囁いてみたいのよ
   ラブ・ラブタウン六本木

  ラ・ストラーダ デリカテッセン
  夜はがらりと気取り顔
  ラブ・ラブタウン六本木
  NET通りで
  ソフィストケイトな愛の語らい
   わたしに囁いてほしい
   最後の十セント
   わたしだけに わたしにだけ
   囁いてほしいのよ
   ラブ・ラブタウン六本木

   二人でそぞろ歩きたい
   狸穴 大使館
   二人だけで 二人でだけ
   ひと時の夢みたい
   愛恋夢の六本木

 六本木からの帰りは惨めだった。わたしの人生はもう終わってしまったのか。地下鉄の車両の中にまで、雨が降っているような感覚があった。車窓を流れる暗闇が、死後の世界を連想させた。わたしは、その時空では、本当は死んでいたのかもしれない。いま、日記を書いているわたしは別次元のわたしのような気がする。そこで、戸沢暢美の『濡れていた瞳』のような歌が生まれる。

  あの日 別れたあの眼差しに 
   濡れながら もう一度
    巡り逢えるならば
     何も聞かず 何も言わず
      ただ抱きしめたい
    心の秘密を打ち明けたのに 
     それが別れ 蒼い春の
      夢 幻 愛

  時はあの日に釘付けのまま
   もう若くないけれど
    想い起こすならば
     まるで昨日 別れたよう
      まだ揺れる瞳
    一度は許した二人の仲に
     いつか風が知らぬ顔で
      流れていた街

  明日はどうして生きるにしても
   あの雨の足音は 
    今も耳に残る
     歳を重ね 時を超えて
      胸焦がすばかり
    再び逢えると思ってみても
     今は遥か遠い昔
      まだ揺れる心

  雨の降る街 歩いてみれば
   なぜかしら涙雨
    胸に降り続けて
     ビルが歪み 橋が流れ
      ああ 街が消える
    出逢いの街角 あの日のままに
     今日も若い恋人達 
      甦る瞳