千鶴子の歌謡日記

 もし、これが実現したらなんと素晴らしいだろう。あの完全無欠の美男子が、常に優等生であった好男子が、豊かな資産に恵まれた御曹司が、わたしのために死を選ぶのだ。そして、あの人の死によって、このわたしは、あの人のすべてを独占し、あの人の死のために、わたしはこの上もなく美しい女になれるのだ。そう。わたしは、あの人の完全な美を利用して、わたしの虚栄を充足させ、わたしの虚飾の最も美しい補完物としたい。わたしは一切傷つかず、あの人だけが完膚なきまでに絶望して死に至る。わたしは、たぐいまれな恋愛の勝利者となる。これまで受けた失恋の負債を一挙に返上し、頭脳明晰で、大学随一の美男子を足元に跪かせることにより、恋愛の債権者となる。それも、巨額の債権。
 今後、この計画に沿って行こう。これは一つのゲーム。そして、わたしが一つのゲームとしてやる限りにおいて、もしわたしがゲームを失ったとして、それはもともと架空のゲームであるから、実人生のわたしの敗北とはならない。いずれにしても、彼と結婚することは考えられない。結婚するとしたら、彼が就職して、ある程度の収入を得られるようにならなければならい。南こうせつの『神田川』や上村一夫の『同棲時代』のような生活は考えられない。
「何がなくても、貴方さえいれば」
というような生活をわたしは営めない。お金は多い方がいい。あればあるほどいい。そこで、北山修の『コブのない駱駝』のような歌が生まれる。

  金がないない 金がない
  金がないない 金がない
  ああ 金もないのに 金がないなんて

  金がないから 本がない
  金がないから 本がない
  ああ 本もないのに 学生だなんて
 
  本がないから 物知らず
  本がないから 物知らず
  ああ 物も知らずに 卒業だなんて

  物を知らない だめ社員
  物を知らない だめ社員
  ああ 無知な社員に 月給だなんて

  だめな社員に ナスがない
  だめな社員に ナスがない
  ああ ナスもないのに ボーナスだなんて

  ナスがないから 金がない
  ナスがないから 金がない
  ああ 金もないのに 金がないなんて 

  金がないない 金がない
  金がないない 金がない
  ああ 金もないのに 金がないなんて