食堂は二つある。それに、昼休みは混雑している。もし、食堂にいるのだとしたら、諦めるよりほかにない。じゃあ、民法Ⅱの教室だろうか?さぼった授業のノートを、すぐにかりに行くといういう確証は何一つない。だけど、その時、授業はすでに終了していた。民法Ⅱの教室に行ったところで、彼の友達がそこにはいないと考えるのが普通だろう。とすると、そのほかのところ――図書館か、中庭か、生協か、掲示板の前か、屋上か。わたしは途方に暮れた。何としても、彼にノートを貸してコネクションを作りたかった。ノートを貸すことで、彼と何らかのつながりを得たかった。
わたしは図書館に入った。友達を探しているようなふりをして、五百席もある閲覧室やレファレンスルームや雑誌室に、足早に彼の姿を求めた。でも、居なかった。わたしは、踊り場のステンドグラスを背に、図書館の古色蒼然とした階段を降りながら、彼がコーヒーが好きだったことを思い出した。食堂のコーヒーの売り場の近くにいるかもしれないと思って、再び、食堂に行った。川村さんに会うことだけを恐れて、わたしはキャンパスの中を、食堂から図書館、図書館から食堂へと、小走りに急いだ。
わたしは、両方のコーヒー売り場の近くを探してみた。でも、彼は見当たらなかった。自動販売機の近くにもいなかった。まるで、さっき見かけた彼が、幻であったかのように、彼はどこにも居なかった。昼休みは、半分過ぎていた。わたしは絶好の機会を失おうとしていた。試験時に、終了間際で解答を書き直しているような焦燥と、ある場所においてあったはずのものがどうしても見つからないような苛立ちとが、わたしをとらえた。わたしは、悄然と、食堂のむっとする雑踏の中に佇んでいた。微かな息切れが深いため息に変わった。考えられるところ、捜すことのできるところは、探してみた。彼は、今、図書館にいるのかもしれない。わたしが図書館をさまよっていた時、彼は食堂にいたのかもしれない。『君の名は』の真知子と春樹のすれ違いのようだ。
わたしは図書館に入った。友達を探しているようなふりをして、五百席もある閲覧室やレファレンスルームや雑誌室に、足早に彼の姿を求めた。でも、居なかった。わたしは、踊り場のステンドグラスを背に、図書館の古色蒼然とした階段を降りながら、彼がコーヒーが好きだったことを思い出した。食堂のコーヒーの売り場の近くにいるかもしれないと思って、再び、食堂に行った。川村さんに会うことだけを恐れて、わたしはキャンパスの中を、食堂から図書館、図書館から食堂へと、小走りに急いだ。
わたしは、両方のコーヒー売り場の近くを探してみた。でも、彼は見当たらなかった。自動販売機の近くにもいなかった。まるで、さっき見かけた彼が、幻であったかのように、彼はどこにも居なかった。昼休みは、半分過ぎていた。わたしは絶好の機会を失おうとしていた。試験時に、終了間際で解答を書き直しているような焦燥と、ある場所においてあったはずのものがどうしても見つからないような苛立ちとが、わたしをとらえた。わたしは、悄然と、食堂のむっとする雑踏の中に佇んでいた。微かな息切れが深いため息に変わった。考えられるところ、捜すことのできるところは、探してみた。彼は、今、図書館にいるのかもしれない。わたしが図書館をさまよっていた時、彼は食堂にいたのかもしれない。『君の名は』の真知子と春樹のすれ違いのようだ。


