千鶴子の歌謡日記

  笑いたくないけれども 
  笑わなけりゃ
  生きてはゆけなーい 
  自分ではないけれども 
  ああ そうしなけりゃ 
  生きてゆけない 
  死ぬ 死ぬ 生きづらいー
  ガラポンガラポン ガララガラポン  
  ガララガラポーンガラ  
  そうしなきゃ 生きてゆけない

  ガラポンガラポン ガララガラポン  
  ガララガラポーンガラ 
  ガラポンしなーきゃ 生きてゆけーない
 
 南校舎B1の学生食堂に向かって歩きながら、わたしは、わたしがとっている一時間目の民法Ⅱと、彼の取っている二時間目の民法Ⅱの教授が、同じであることに気付いた。わたしが受講しているのは経済学部に設置されている科目、彼が受講しているのは法学部に設置されている科目。そして、彼にわたしのノートを貸してあげることを思いついた。
 つぎに、どうやったら、彼にノートを貸すことができるだろうかと策略をめぐらした。ぐずぐずしていると、彼が食堂で他の友達からノートを貸してもらう可能性がある。そして、もし、彼がまだノートを借りていなくて、わたしと出会ったとしたら、どうしたら、わたしの方から彼に半ば強制的に貸すのではなくて、彼の方から、彼が懇願することによって、わたしが受動的に貸すような状況にすることができるだろうか。
 わたしは、なるべく、早く彼を雑踏の中から見出さなくてはならなかった。そして、彼と出会ったら邪魔になる川村さんと別れなくてはならなかった。彼女と一緒に彼を探したら、彼女があとで彼に何というかわからない。わたしが、彼にノートを貸すことが、計画的であったと彼にわかってしまったら、わたしの奸計は、全く功を奏さなくなる。
 彼女をまくことは訳がなかった。わたしは、彼女と違う食券を買い、その窓口に並んでいる間に、彼女と別れることができた。つぎの問題は彼がどこにいるかだった。考えられるのは三つのケースだった。ノートを借りに民法Ⅱの教室に行くか、食堂に行くか、それ以外のところに行くか。