千鶴子の歌謡日記

   母を弔う哀れさに
     思わずいだけば愛しさつのる
 
  辛い夜に舞い踊る
    別れの宴 飾る君よ
   ひとり異国をあとにする
     冷たい情けを許しておくれ
 
 『反抗的人間』を巡る論争で敗北したアルベール・カミュの作品が好きだ。勝利したジャン・ポール・サルトルの作品は嫌いだ。アルジェリアの貧民街で青春を送り、ドイツ占領下のパリでパルチザンに身を投じたアルベール・カミュが、『自由への道』のマチウ・ドラリュのようにパリのブルジョア知識人家庭で育ったジャン・ポール・サルトルに知的論争で勝てるわけがない。応援したいのはアルベール・カミュの方だ。そこで、坂井泉水の『負けないで』のような歌が生まれる。
 
  いつか君は人生にうずくまり
  いつか君は人の世にかがみ込む
   打ちひしがれて流す涙
    濡れた頬にかかる夜露に
     この世を呪うこともあるだろう
    播いた努力が実らなくても
    抱いた夢が描かれなくても
     朝陽のピストル 空に響けば
      君は飛び出せ あざやかに
      君は飛び出せ さわやかに
 
  いつか君は恋人に裏切られ
  いつか君は友達に騙される
   この世の果てと落とす涙
    濡れた頬にそよぐ夜風に
     他人を恨むこともあるだろう
    あげた誠が知られなくても
    捧げた愛が報われなくても
     夕陽のシンバル 海に響けば
      君は飛び出せ 帆をあげて
      君は飛び出せ 星空に
       
     朝陽のピストル 空に響けば
      君は飛び出せ あざやかに
      君は飛び出せ さわやかに
 
 電流論争で直流を主張し、敗北したときのトーマス・アルバ・エジソンは好きだが、交流を主張し、今日まで続く世界制覇を果たしたニコラ・テスラは嫌いだ。要するにわたしは、成功者は嫌いなのだ。しかし、早々と官職を辞し、財閥を作らず、成功者の地位に恋々としなかった渋沢栄一は好きだ。明治政府からの官職の誘いを、政府批判の道を選んで辞した福沢諭吉も好きだ。