と母が口ずさむ。そこで、佐藤惣之助の『すみだ川』のような歌が生まれる。
常磐津通いの裏小路
お前は藍の 夕暮れに
辛い稽古と枯れ葉に泪
あの日 お前の眩しい後れ毛
燃え上がる唇
揺れ惑う瞳
お前の寂しい節回し
俺の心に染み入るようだ
新内流しの裏通り
お前の雪の指先が
不意の別れを辛いと縋る
あの日 お前は形見の襟巻
北国へ旅立つ
俺のため編んだ
お前の哀しい唄声が
俺の心を引き裂くようだ
戻ればお前は黄泉の旅
お前の膝で聴く三味を
想い出しては桜に涙
いまは やつれたお前の卒塔婆
春霞 朧に沈み逝く夕陽
お前の牡丹の振り袖が
俺の背中に手を振るようだ
浅草の帰りに、上野に寄った。西郷隆盛の銅像を見上げて、東の比叡山、東叡山寛永寺の徳川慶喜廟を墓参した。途中、行列のできるスイーツ屋で、モンブランを食べた。美味しいが、それだけ。高くておいしいのは当たり前。安くておいしければ感激する。高くてまずければ憤慨する。最近、「うまい棒」のような、美味しくて安物が減った。
谷中あたりには来るたびに新店舗がある。どこの飲食店も、まずいものをいかに高く売るかに四苦八苦している。飲食店はリピータがうまれなければ終わりだ。どんなものでも存続の努力をしなければ絶える。そこで、さとうしろうの『谷中ほたる』のような歌が生まれる。
古びた地図を 訳もなく
ボストンバックに 詰め込んだ
団子坂から 三線の音が
耳に絡まる 夜だった
旅立つ私に この街で
立った噂の 染み付いた
古びた地図が なんになるのさ
古びた恋に 火をつけて
谷中の墓地で 燃やしたよ
五重塔の 焼け跡に
雪のちらつく 朝だった
逃げてく私に この街で
立った噂の 染み付いた
古びた恋が なんになるのさ
古びた愛の 燃えかすを
上野の駅で ばらまいた
西郷さんの 銅像に
鳩が飛び交う 昼下がり
去り行く私に この街が
未練がましく 縋り付く
古びた愛は 足手まといさ
一月三日
常磐津通いの裏小路
お前は藍の 夕暮れに
辛い稽古と枯れ葉に泪
あの日 お前の眩しい後れ毛
燃え上がる唇
揺れ惑う瞳
お前の寂しい節回し
俺の心に染み入るようだ
新内流しの裏通り
お前の雪の指先が
不意の別れを辛いと縋る
あの日 お前は形見の襟巻
北国へ旅立つ
俺のため編んだ
お前の哀しい唄声が
俺の心を引き裂くようだ
戻ればお前は黄泉の旅
お前の膝で聴く三味を
想い出しては桜に涙
いまは やつれたお前の卒塔婆
春霞 朧に沈み逝く夕陽
お前の牡丹の振り袖が
俺の背中に手を振るようだ
浅草の帰りに、上野に寄った。西郷隆盛の銅像を見上げて、東の比叡山、東叡山寛永寺の徳川慶喜廟を墓参した。途中、行列のできるスイーツ屋で、モンブランを食べた。美味しいが、それだけ。高くておいしいのは当たり前。安くておいしければ感激する。高くてまずければ憤慨する。最近、「うまい棒」のような、美味しくて安物が減った。
谷中あたりには来るたびに新店舗がある。どこの飲食店も、まずいものをいかに高く売るかに四苦八苦している。飲食店はリピータがうまれなければ終わりだ。どんなものでも存続の努力をしなければ絶える。そこで、さとうしろうの『谷中ほたる』のような歌が生まれる。
古びた地図を 訳もなく
ボストンバックに 詰め込んだ
団子坂から 三線の音が
耳に絡まる 夜だった
旅立つ私に この街で
立った噂の 染み付いた
古びた地図が なんになるのさ
古びた恋に 火をつけて
谷中の墓地で 燃やしたよ
五重塔の 焼け跡に
雪のちらつく 朝だった
逃げてく私に この街で
立った噂の 染み付いた
古びた恋が なんになるのさ
古びた愛の 燃えかすを
上野の駅で ばらまいた
西郷さんの 銅像に
鳩が飛び交う 昼下がり
去り行く私に この街が
未練がましく 縋り付く
古びた愛は 足手まといさ
一月三日


