阿蘇に咲くは みやまきりしま
大晦日
大みそかになると思い出す人。今はもう、二度と戻らない人。わたしに好意を示してくれたのに、そのくせわたしの行為に迷惑そうに目を細めていた人。わたしにはわからない。なぜ、わたしの好意を拒むのか?そして、なぜ、わたしの心を理解してくれないのか?わたしはあなたに、生まれて初めてラヴレターを書きました。お正月にもちゃんと年賀状を書きました。そして、ふたりで年の暮れに東京文化会館へ、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調を聞きにコンサートに行ったとき、わたしはあなたに手製のケーキをプレゼントしてあげました。スズランはアルミホイールで根を包んで渡したけど、花言葉が「純愛」だって知っていて?
あなたにはわからなかったの?あなたにラヴレターを出すときに、幾度も清書して、ポストの前でわたしがどれほど、出すか出すまいか、迷ったことを。わたしがどんな気持ちで、何時間もかけてケーキを作ったのか、あなたにはわからなかったの?あなたに年賀状を出すときに、わたしが幾枚清書しなおしたか、あなたにはわからなかったの?あなたとデートするとき、前の晩にわたしは二時間ぐらいかけて、お風呂の中で体中を綺麗にしたのよ。あなたと会うときは、いつも新調のワンピースを着ていたのよ。デートする時に母の香水をつけたり、姉の香水をつけたりして、いつも違う香水をつけていたのをあなたは知っていて?
そう、あなたはアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』でいたかったのね。ティルソ・デ・モリーナの『セビリアの色事師と石の客』のドン・ファンのように、一人の女に束縛されることなく自由を享受し、多くの女の人たちに思いを寄せてもらいたいと思っていたのね。だから、一人の女を選ぶことに当惑を覚えるのね。わたしがあなたを家に招待してご馳走したとき、あなたは、わたしが何も言わないのに、
「僕は君を選べない、僕は君を選べない」
と繰り返し、おっしゃっていたわね。あなたはきっと、わたしがあなたを家に招待したので、わたしがあなたを選んだと思ったのね。だから、わたしを拒むようなことを言ったのね。そこで、鳥塚繁樹の『想い出の渚』のような歌が生まれる。
想い出そうよ 楽しかった日を
誰もいない 渚のデート
想い出そうよ 幸せな日を
大晦日
大みそかになると思い出す人。今はもう、二度と戻らない人。わたしに好意を示してくれたのに、そのくせわたしの行為に迷惑そうに目を細めていた人。わたしにはわからない。なぜ、わたしの好意を拒むのか?そして、なぜ、わたしの心を理解してくれないのか?わたしはあなたに、生まれて初めてラヴレターを書きました。お正月にもちゃんと年賀状を書きました。そして、ふたりで年の暮れに東京文化会館へ、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調を聞きにコンサートに行ったとき、わたしはあなたに手製のケーキをプレゼントしてあげました。スズランはアルミホイールで根を包んで渡したけど、花言葉が「純愛」だって知っていて?
あなたにはわからなかったの?あなたにラヴレターを出すときに、幾度も清書して、ポストの前でわたしがどれほど、出すか出すまいか、迷ったことを。わたしがどんな気持ちで、何時間もかけてケーキを作ったのか、あなたにはわからなかったの?あなたに年賀状を出すときに、わたしが幾枚清書しなおしたか、あなたにはわからなかったの?あなたとデートするとき、前の晩にわたしは二時間ぐらいかけて、お風呂の中で体中を綺麗にしたのよ。あなたと会うときは、いつも新調のワンピースを着ていたのよ。デートする時に母の香水をつけたり、姉の香水をつけたりして、いつも違う香水をつけていたのをあなたは知っていて?
そう、あなたはアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』でいたかったのね。ティルソ・デ・モリーナの『セビリアの色事師と石の客』のドン・ファンのように、一人の女に束縛されることなく自由を享受し、多くの女の人たちに思いを寄せてもらいたいと思っていたのね。だから、一人の女を選ぶことに当惑を覚えるのね。わたしがあなたを家に招待してご馳走したとき、あなたは、わたしが何も言わないのに、
「僕は君を選べない、僕は君を選べない」
と繰り返し、おっしゃっていたわね。あなたはきっと、わたしがあなたを家に招待したので、わたしがあなたを選んだと思ったのね。だから、わたしを拒むようなことを言ったのね。そこで、鳥塚繁樹の『想い出の渚』のような歌が生まれる。
想い出そうよ 楽しかった日を
誰もいない 渚のデート
想い出そうよ 幸せな日を


