千鶴子の歌謡日記

       淡い 淡い 淡い期待
  遥かなあなたの想い出を
   胸に抱いてお寺巡り

  ふたりで旅をするときは
   気まずい思い先に立つ
    だから ひとりで旅をする
  ふたりで旅をするときは 
   夜にいらない気を使う
    だから いつもひとり旅
     旅は心の大掃除 
      思い悩んだ出来事だけ
       捨てて 捨てて 捨てて来たい
   届かぬわたしの片想い
    お湯に流して名所巡り
     旅は自由な巡り逢い
  想いもしない人と出逢う
       甘い 甘い 甘い期待
   冷たいあなたの想い出を
    熱く流そう お湯の宿で

 印象に残ったのは、リフトから眺望できた夕方の雪景色だけ。鼻寒いだけの退屈なスキーだった。湯けむりの向こうに、川端康成の『雪国』の駒子が思い出される。島村は駒子を弄んだ。駒子をあわれ、いとおしむ島村の後悔は、何と身勝手な不倫か。1歳で父、2歳で母を喪い、両親の愛を知らずに成長した川端康成は、人の愛し方を知らなかったのだ。丁度、母猫からすぐに引き離された子猫が、甘噛みを知らないように。遺された遺族のことを想えば、とても自死などできなかったはず。『伊豆の踊子』もそうだけど、川端康成は一人旅が好きなのだ。彼の人生もそうだったのかもしれない。そこで、谷村新司の『いい日旅立ち』のような歌が、キャンペーンもなく曲先で生まれる。

  いまさら なにを言ったって
  すべてが あとの祭りなら
  きょうからお別れと 未練 殺して
  いまはもう 想い出も あなたの嘘ね 
  ばかな わたし

  いいの もうどうでもいい
  いいの もうどうでもいい
  だれか待つ 忘れ旅ひとり
  どこかに いい人 きっといるはず

  これから だれと出逢っても
  あんなに 燃えることはない
  あすから 生きようと地図を広げて
  いまはもう あの人も黄ばんだ写真
  遠い旅路

  雲よ 忘れさせて
  風よ 忘れさせて
  愛の宿 さがす旅ひとり
  わたしを待つ人 どこにいるのよ

  いいの そばにいるだけで
  いいの そばにいるだけで
  愛の巣に とまる人ならば
  わたしを愛してくれる人なら