囁いて舞う
十二月十三日
父の同僚の奥さんとその子供たちと一緒に越後湯沢へスキーに行った。参加者は、水原家は、わたしと母、島野家は、夫人と大学4年生の久夫、中学3年生の清晴、19歳の専門学校生の洋子、18歳のフリーターの重子、町田家は、夫人と中学2年生の伸江、小学校6年生の肇一、小学校3年生の秀康。総勢、11名の大所帯だ。父の同僚のリゾートマンションの一室には泊まり切れないので、子供たちはリゾートマンションのゲストルームに泊まった。大人数の旅は疲れるだけ。できれば一人旅したかった。そこで、岡本おさみの『襟裳岬』のような歌が生まれる。
希望を ひとつ 消して ください
栄光の 舞台の 煌めきは
わたしを わたしを ンーン
疲れさせる ばかり
カフェオレ ひとつ 入れて ください
長旅の 終わりの やすらぎを
わたしに わたしに ンーン
分けて欲しい 少し
コーヒー 沸かしを 真ん中に
夢を 並べて 腰を 掛けよう
小さな 望みを 口ずさみ
ギター 爪弾き 愛を歌おう
煙草を 吸って かまいませんか
紫の 煙の 揺らめきに
わたしは わたしは ンーン
夢見心地 しばし
都会の 灰皿 傍らに
囲炉裏を 囲んで 心 暖め
手と手を 互いに 取り合って
胸の 痛みを 慰め合おう
往きの新幹線の中で、島野家の久夫さんと向かい合わせになった。早稲田の人だというのでどんな人かと会う前までは、勝手に心ときめかせていた。そして、列車の中で2時間余りも向かい合っていてうんざりした。話がつまらない。自意識過剰な男。自慢話ばかり。がっかりしたところを内省すると、わたしは何かを期待していたらしい。そう、わたしは初めて会う人との椿事を期待していたのだ。だから本当は一人旅がしたかった。そこで、吉田旺の『ひとり旅』のような歌が生まれる。
ひとりで旅をするときは
愛想笑いにこわばった
頬を風で癒したい
ひとりで旅をするときは
お世辞を言い 干涸らびた
口を川ですすぎたい
旅はひそかな巡り逢い
想いもしない出来事への
十二月十三日
父の同僚の奥さんとその子供たちと一緒に越後湯沢へスキーに行った。参加者は、水原家は、わたしと母、島野家は、夫人と大学4年生の久夫、中学3年生の清晴、19歳の専門学校生の洋子、18歳のフリーターの重子、町田家は、夫人と中学2年生の伸江、小学校6年生の肇一、小学校3年生の秀康。総勢、11名の大所帯だ。父の同僚のリゾートマンションの一室には泊まり切れないので、子供たちはリゾートマンションのゲストルームに泊まった。大人数の旅は疲れるだけ。できれば一人旅したかった。そこで、岡本おさみの『襟裳岬』のような歌が生まれる。
希望を ひとつ 消して ください
栄光の 舞台の 煌めきは
わたしを わたしを ンーン
疲れさせる ばかり
カフェオレ ひとつ 入れて ください
長旅の 終わりの やすらぎを
わたしに わたしに ンーン
分けて欲しい 少し
コーヒー 沸かしを 真ん中に
夢を 並べて 腰を 掛けよう
小さな 望みを 口ずさみ
ギター 爪弾き 愛を歌おう
煙草を 吸って かまいませんか
紫の 煙の 揺らめきに
わたしは わたしは ンーン
夢見心地 しばし
都会の 灰皿 傍らに
囲炉裏を 囲んで 心 暖め
手と手を 互いに 取り合って
胸の 痛みを 慰め合おう
往きの新幹線の中で、島野家の久夫さんと向かい合わせになった。早稲田の人だというのでどんな人かと会う前までは、勝手に心ときめかせていた。そして、列車の中で2時間余りも向かい合っていてうんざりした。話がつまらない。自意識過剰な男。自慢話ばかり。がっかりしたところを内省すると、わたしは何かを期待していたらしい。そう、わたしは初めて会う人との椿事を期待していたのだ。だから本当は一人旅がしたかった。そこで、吉田旺の『ひとり旅』のような歌が生まれる。
ひとりで旅をするときは
愛想笑いにこわばった
頬を風で癒したい
ひとりで旅をするときは
お世辞を言い 干涸らびた
口を川ですすぎたい
旅はひそかな巡り逢い
想いもしない出来事への


