同世代の子供たちからは怖がられるばかりだった、片方だけ色の薄い左目――。


「そんなこと、初めて言われた。……ありがとう」


照れ臭くて、それ以上に嬉しくて。


「へへ……」


きゅうっと胸が締めつけられ、きゅんと疼くのを誤魔化そうとしたら、変な泣き笑いになった。
頬に手を添えられたままだから、熱を帯びて赤く染まる顔を隠せない。


白夜がわざわざ背を屈め、私の左目を覗き込んでくる。
赤い瞳に奥の奥まで射貫かれ、目を逸らすこともままならずにいると。


「幽世の婚姻は、言霊と接吻だけで成立する」

「っ、え?」

「まずは言霊。水葵、俺はお前を嫁にする」


淀みなく宣言する彼に、私の目は釘付けになる。
私に降る、彼の大きく黒い影が色濃くなったことに気付いた次の瞬間、温かく柔らかいものが、私の唇に重なった。


反射的に見開いた目に映るのは、近すぎて焦点が合わない端麗な顔。
――いったい、なにが起きているのか。
理解が追いつかない。


最後に一度、強く押し当てられて離れていく温もりを、私はぼんやりと目で追った。
白夜は、そこに不敵な笑みを浮かべて――。


「これでお前は、永遠に俺だけの花嫁だ」