慌てて伸ばした私の手を掠め、まるで糸で引かれるように彼のもとに飛んでいく。
白夜は顔色一つ変えずにキャッチして、遠慮の欠片もなく、ガサガサと紙袋を開けた。


「っ、ちょっ……」

「……留め挿しか」


横暴な彼に憤慨して、止めに入ろうとした私を無視して、長い指で摘まみ上げたのは、赤と黒のとんぼ玉がシックで可愛い、小さなかんざしだった。


白夜はそれを目の高さに上げ、指先で紙縒りのようにくるくる回す。
ムッと顔をしかめてなにか思案し、私に近付いてきて……。


「っ……」

「悔しいが、よくわかってる」

「……え?」


反射的に身を竦めた私は、頭上から降る呟きにつられて、前髪に手を遣った。
左目を隠すために、いつも額に下ろしている長い前髪が、横に流してかんざしで留められている。


私はパチパチと瞬きをして、彼を見上げた。
白夜は口元をへの字に曲げて、私の頬に触れた。


「千雅の貢ぎ物でも、かんざしくらいは許してやる」

「え?」

「……俺は色が違うお前の目、わりと好きだ。似合ってるから、着けておけ」


ぶっきら棒な言葉がやけに温かくて、胸に沁み渡る。
私の心臓が、不覚にもドキドキと騒ぎ出した。