「っ……また読んだのっ!?」


私は彼の手を振り解き、一歩飛び退いて自分を抱きしめた。
警戒心を漲らせて、ギロリと睨む私を、白夜は横柄に鼻で笑う。


「読んでない。知っていたと言っただろ」

「どうして決めつけ……」

「実際、そうだっただろうが」


上から目線の流し目が腹立たしいけど、あまりに自信たっぷりに言い切られ、私はがっくりと肩を落とした。


「……私は、幽世で生きると決めただけ。白夜の嫁になること、納得したわけじゃないから」


気を取り直し、ツンと澄まして続けると、白夜が「は?」と眉根を寄せた。


「一緒に来ておいて、なにを矛盾したことを」

「白夜、知らないでしょ。現世では、契約結婚ブームなんだよ」

「結婚に、契約?」


怪訝そうに聞き返され、私はグッと胸を反らしてみせた。


「お互い好きで、愛し合ってするのが普通の結婚。契約結婚っていうのは、お互いの利害が一致して、形だけの結婚を契約すること」


人差し指をビシッと立てて、もっともらしい説明をする途中で、白夜がハッと浅い息を吐いた。