相変わらず白夜のような、幽世の仄白い空の下――。
森の中の小径を、私は白夜に手を引かれて歩いていた。


現世を後にしてからずっと、彼は無言でいる。
それなのに、右手は繋がれたまま。


沈黙が、気恥ずかしい。
私は、なにか会話の切り口を探して、


「ねえ。……なんで来たの?」


先を行く黒く広い背中に問いかけた。


「今日も私、『会いたい』って言わなかったのに。タイミングよすぎない?」


上目遣いでこそっと訊ねると、彼がピクッと反応した。


「何度も同じことを言わせるな。俺は神だ。タイミングなど図る必要はないし、そもそも、今日が神力の限界だと、お前に教えたのは俺だ」


振り返りもしないし、返事も素っ気ない。
でも、心なしか、私の手を握る力が強まった気がする。
私は意味不明に火照る頬に自由な方の手を当て、彼と繋ぐ手に目を落とした。


「……でも私、消滅するか嫁ぐか、白夜に答えてなかったのに」


すると、白夜がピタリと足を止めた。
短い溜め息をついて、ようやく私に向き直る。


「お前は、俺の嫁になる以外の答えは出さない。知っていたから来た。それだけのことだ」