「白夜が悪さしないよう、常に目を光らせておきます」


言葉通り、彼女の目が金色に光る。


「!?」


それを見て、千雅がギョッとしたように腰を浮かせた。


「なに? なんなんだよ? 死神って? 白夜って? 小町さんっていったい……」


一人状況を把握できず混乱の極致で、乱暴に髪を掻き乱す。
と、その時。


「っ……!!」


今までにない激しい痛みが左目に走り、私は小さく呻いて手を当てた。
上体を支えきれず、テーブルにガクッと突っ伏す。


「水葵!!」


みんなが険しい声で私を呼びながら、ガタンと椅子を鳴らす。


「水葵、もう時間がないわ」


小町が私の肩を抱いて、緊迫した声で耳打ちする。
私は固く目を瞑り、何度も頷いて応えた。
目蓋の裏に、黒ずくめで赤い瞳の彼を浮かべる。
その瞬間――キッチンに突風が吹き荒れた。


「きゃあっ」

「うわっ……」


母と千雅の短い悲鳴が聞こえる。
私は風がやむのを待って、そろそろと身体を起こした。


右目だけの視界で、窓辺に佇む白夜を見つけた。
彼の唐突な登場に、父も母も千雅も、声もなく目を瞠る。


「水葵、俺と来るなら来い」


白夜は皆の視線を一身に浴びても気にせず、私にスッと手を差し伸べた。