「映画なんか、またいつでも……」

「お父さん、お母さん。今までありがとう」


私は、彼がモゴモゴと続ける途中で、父と母に向き直った。
二人は千雅と違って、今日この日の意味をわかっているから、やや青ざめた神妙な顔をしている。


「お父さん、私を生かしてって死神様に頼んでくれて、ありがとう」


私がはにかんで笑うと、母が両手で顔を覆って俯いた。


「水葵? ……おじさん、おばさん?」


千雅が怖々と探るように、交互に視線を向ける。


「死神って? いったいなんの話だよ?」


言いながら困惑する彼の横で、父が静かに口を開いた。


「水葵。これからも、生きてくれるか」


私は、首を縦に振った。


「私はこれからもずっと、お父さんとお母さんの娘。何度でも会いに来るから」


父の目を見つめ返し、淀みない意思を告げる。


「水葵」


母がズッと洟を啜り、私をギュッと抱きしめた。
私も鼻の奥がツンとするのを感じながら、母の腕に手をかける。


「小町さん……どうか水葵をお願いします。私たちの大事な大事な娘なんです……」


母は名残惜しそうに抱擁を解き、テーブルの端に座る小町に声をかけた。


「ええ、もちろん」


小町は、力強い笑みを浮かべて応じる。