とくんとくんと淡い音を奏でる鼓動に戸惑いながら、彼に借りた羽織の袷を手繰り寄せる。


答えは、私の中にある。
それなのに私は、彼の横顔ばかり、バカみたいに凝視していて――。


「見すぎだ、水葵」


白夜が顔をしかめて言うのを聞いて、ハッと我に返った。
行動の意図を探ってか、私の方にグッと身を乗り出してくる彼から、条件反射で飛び退く。
白夜は、忌々しげに溜め息をついた。


「ダメと言われて読まないから、安心しろ」

「え? あ」


言葉の意味を一拍分遅く理解して、口に手を当てる。
私ですら一瞬忘れてたのに、律儀な人だ。
そんな彼が微笑ましくなり、私はクスクス笑い出した。


「? 泣いたり笑ったり、忙しいヤツだな」


気味悪そうに、私を横目で見遣る白夜を見て、


「……あ。そうだ!」


昼間、小町が言い残した謎々の答えが突如閃き、ポンと手を打った。


「白夜、昼間のことだけど」

「え?」

「私、千雅と出かけたりしないから」


私の言葉で記憶を導いたのか、白夜が不機嫌に顔をしかめる。
それでも私は怯まず。


「だから、ヤキモチ妬かなくて大丈夫だよ」


目尻の涙を指で拭って、ニコッと笑みを浮かべる。