「……そうなっても、白夜が助けてくれるよね?」


上目遣いで探りかけた。
白夜は思案顔で間を置いてから、ひょいと肩を竦める。


「俺の嫁になるならな」


煙に巻くような言い方をして、軽く草を分けて腰を下ろした。
先ほど屋根の上にいた時と同じく、胡座を掻いて片膝を立てる。
そこに頬杖をついて、靄が立ち込める湖の水面をジッと見据えた。
私は彼の返事に戸惑ったものの、意を決してペタンと座り込み、


「あの……ごめんなさいっ!」


肩を力ませ、謝罪した。
白夜が私に視線を流すのを感じる。


「昼間私、白夜に酷いこと言った。ごめ……」

「真実だ。別に構わない」


白夜は、小さな吐息で私を遮った。


「俺は、そういう役割の神だ。人間に舐められるようじゃ仕事にならない。怖がられてこその死神だ」


自虐的な言い方だけど、自暴自棄になってるのではない。
彼の赤い瞳には、納得と諦めが入り混じった達観が滲み出ている。
でも……私は、そこに微かに揺れる光を見つけた。


「……それだけじゃない、でしょ」

「え?」

「怖がられるだけの神じゃないから、父はあなたに私の命乞いをした」


白夜は一瞬ピクリと眉尻を動かしてから、私に警戒を漂わせる視線を戻した。