訝し気な質問が、頭上から降ってくる。


「だから、そのっ……今、私が考えたこと」


私は彼の胸元の袷を握りしめ、ボソボソと返事をした。
ところが。


「……?」

「なんで、読んでくれないのっ!?」


どうやら全然伝わっていないと察して、半泣きになって顔を上げた。


「見透かすとお前、怒るだろうが」

「~~肝心な時に気遣わないでよ。もう、バカっ!」

「バ……? って、おい、暴れるな」


恥ずかしいのと悔しいので、広い胸をドンドン叩いて詰る私を、白夜は鋭い声で制しながら、ぎゅうっと抱きしめる。


「!」

「宙に浮かんだままでもいられないか。誰かが見たら怖がる」


彼の胸にすっぽりと顔を埋め、ひゅっと音を立てて息を止める私に構わず、妙に冷静な状況判断をして――。


「お前の部屋じゃ、両親を起こしてしまうか。水葵、幽世に行くぞ」

「っ、んむ?」

「こっちが夜中なら、滞在時間をそれほど気にする必要はない。現世に朝が来るまでに帰してやる」


白夜が言い終える前に、耳元で風が唸り始める。


「目、瞑ってろ」

「っ……!」


私は彼の胸に抱かれ、言われるがまま固く目を閉じた。