「俺の神力が尽きる前に、自ら消滅したいのか。そんなことをしても、お前は死ねない。無駄に痛いだけだ、やめておけ」

「白夜……っ」


思わず声を上擦らせてしまい、慌てて両手で口を押さえる。
白夜は、屋根の上に胡座を掻いて座っていた。
片膝を立てて頬杖をつき、ジッと闇夜を見据えている。


「よかった、来てくれて」


私は、ホッと胸を撫で下ろした。
意思とは関係なく、頬の筋肉が緩む。
白夜は、視界の端で私をチラリと見遣るだけで、立ち上がろうとしない。


「あの……白夜、降りてきてくれない? 話したいの」


遠慮がちにお願いしても、動こうとしない。
ただ、物憂げに静謐な空気を漂わせて、満点の星空の下に佇んでいる。


「……私のこと怒ってるから、降りてきてくれないの?」


それにも、返事はない。
私は歯痒い気分で唇を噛み……。


「っ、おいっ」


窓枠に足をかけて乗り越えようとした途端、鋭い声がした。
次の瞬間、身体が重力を失い、ふわりと浮き上がる。
私は、黒くて大きい、とても温かい温もりに包まれていた。


そっと足元に目を落とすと、地面が遠い。
――宙に浮いている。