「死神がウロウロしたら、怖がって大騒ぎになる」

「え? ……あ」


私が不満たらたらで、白夜に放った言葉だ。


「白夜は、死神という役目を賜ったにすぎない。人間が持て囃して崇める他の神々と、根本は同じ。それなのに、人間に忌み嫌われるから、極力現世に姿を現さないようにしてる」

「…………」

「まあ、かなり長いこと死神だから、荒んで慣れてはいるけど」


詰るような目を向けられ、私は返事に窮した。
確かに、小町の言う通りだ。
なのに私、白夜に酷いことを言った。


……もしかして、傷ついたから、あんな意地悪を?
ズキッと胸が痛むのを感じて、唇を噛んで俯く。


「反省した? それなら、一つ助言してあげる」


小町が打って変わって明るい口調になるのを聞いて、おずおずと顔を上げた。


「その男との逢瀬。白夜は、水葵が断ろうと思ってるのも、もちろん見透かしてるはずよ」

「え?」

「それなのに、あんな子供っぽい意地悪をした。どういう意味かわかる?」

「…………」


問いかけへの回答に困り、眉をハの字に下げる私に――。


「答えが見つかったら、自分で白夜に確かめてみなさい」


小町はそれだけ言い残し、部屋の隅っこにトコトコ歩いていく。
そして、首輪の鈴をチリンと鳴らし、スーッと消えてしまった。