すると、小町が「にゃあ」と鳴いて、しなやかにベッドから飛び降りた。
床にトンと着地して、私を振り返る。


「毎回毎回。随分と足繁く通わせてるじゃないの」

「え?」

「白夜は天然の頑固者だけど、水葵も素直じゃないわねえ」


一人納得顔で謎な溜め息をつく彼女に、首を傾げる。
小町は「にゃあお」と鳴いて、私の手のスマホに目を注いだ。


「それよりも、それ。最後の逢瀬、どうするの?」


尻尾を揺らして問われ、私は肩を竦めた。
小町まで白夜と同じ言い方……と、不服ではあったけれど。


「行くつもりだったけど、断ろうと思ってる」


そう言って、床に降りてベッドに腰かけた。


「私にとって、最後の日には違いないもん。少なくとも、千雅と映画に行ってる場合じゃないと思う」


迷いながらも言い切り、最後は自分で頷いた。
小町は答えに満足したのか、私の足に身体を擦りつけてくる。


「ふふ。どうしたの? 甘えてるの?」


人間の言葉を喋る白夜の眷属だけど、見てくれは可愛い子猫だ。
その背を撫でようと手を伸ばし――。


「水葵。一つ忠告しておくわ。さっきのは、二度と言ってはダメよ」

「さっきの……?」


静かな怒りが感じられ、ギクッとして手を止める。