私と小町がボソッと零した不平が被った。


「なに?」


赤い瞳にやおら力を込める白夜に慌てて、私は小町を自分の背に隠し、


「白夜こそ。私、『会いたい』なんて願ってないのに、無駄な出入りが多いんじゃない?」


ツンと澄まして、ぷいと顔を背けた。


「俺は、自由に行き来できる神だからな」

「この街には、白夜の姿が見える人、私以外にもきっといる。こんな頻繁に死神様がウロウロしてたら、怖がって大騒ぎにな……」


白夜が無言でドカッと乱暴に腰を下ろし、私の言葉を阻んだ。
感情に乏しい端麗な横顔に、妙な迫力を感じる。


「……白夜?」


私が上目遣いで呼びかけた時、傍らに放り出していたスマホが着信音を鳴らした。


「っ」


ほとんど反射的に手に取ると、モニターに千雅からのLINEの着信が表示されていた。
指をスライドして、メッセージを確認する。


『水葵、誕生日に映画観に行く許可、取れたか?』

「あ」


そうだ、その報告を失念していた。
私はすぐに返信しようと、入力を始めた。


『遅くなってごめん。許可はもらったんだけど……』


ところが、入力するそばから文字化けして、一文字ずつ消えていく。


「っ……」